警視庁捜査一課 ▼第3係▼ ２

不安 ページ23

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「もぉ〜！真太郎くん何件掛け持ちしてんだよ！
度胸無い以外に特徴は！」




真太郎の肩を揺さぶりながら項垂れる隆二。
我に返った亜子が慌てて止めに入る。




「お疲れのようですし… ね？出直しましょう？」




国内外からの分析依頼を受け、人格の変わった真太郎。それはついに亜子にまで飛び火する。




「フッ… 吉瀬じゃないなら〜」




真太郎の視線はぐるりと室内を一周し亜子を視界に捉えるとその瞳を見据え言い放つ。








「孤児。───つまり孤独な人間」









“孤独”







そんな言葉はまるで自分に言われたように亜子は錯覚する。






「子どもは罪を犯せるような年齢じゃないし〜。
僕が犯人なら、親和欲求を満たして正義のヒーローを演じるな〜」






親和欲求─それは人と親しくなりたいと思うこと。


孤独な人ほどそれを感じにくく、またそんな人ほど一度それを満たすと依存しやすい傾向にあると言われている。





犯人はそんな子どもの心理を逆手に取り優越感に浸ろうとしている──これが真太郎の考えだ。





真太郎は首を慣らすともう一度言い放った。








「──間違いない。

これはヒーロー気取りの典型的な無秩序型の犯行だ」








物腰の柔らかな彼はここにはいない。
いるのは鋭い爪で背中をなぞるような不気味な死神だけ。









“お母さんは帰ってこないの………お父さんも…”






“ご両親、亡くなったって……”






“孤独”






“亜子ちゃん、








─────────可哀想”









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──パズルが抜け落ちるような感覚
ゾクッと不安にかられた亜子は感情が溢れ出す───









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「孤独じゃない！！！」








声を荒げる亜子。その額には薄っすら汗が滲んでいて、隆二は初めて見るその姿に止めに入ることも忘れていた。






握りしめられた拳が震えている。






「孤独じゃない……！


あの子も……私も………」






“想っている人がいるから”






だから孤独ではない、と。







亜子は真太郎にそう叫ぶと、心理学室を飛び出した。





その目には涙が溢れ、それを目の当たりにした真太郎もいつしか不気味さをなくし、消沈していた。

そんな姿を見ると隆二は何も言えず、ただ亜子を追いかけた──。





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