ときめかない心 ページ8
「いや、お世辞抜きに綺麗だよ。やっぱりこのドレスにしてよかった」
「あ、そうだ、ドレスのお礼言ってなかった！
ありがとうございます。こんな高いもの…」
「別にどうってことありません」
「いや、そういうわけには…」
「あとこれ…」
そう言ってギジュンさんはボルドーのベルベットの小箱を
わたしの膝の上にそっと置いた。
「何ですか？これ」
「開けてみて」
「？」
言われるがまま、わたしはその箱を開けてみた。
そこに入っていたのは、キラキラと輝く小さなダイアモンドが
数えられないくらい着いたプラチナのネックレスだった。
わたしは息を飲んだ。
「凄い…」
「これは借り物」
「いや、こんな高価な物付けるだけでもおこがましいです！」
はは、とギジュンさんは笑って箱からネックレスを取り出して
わたしの首に手を伸ばした。
わたしが髪を持ち上げると、手を後ろに回して覗き込むように
付けてくれた。
ギジュンさんの顔が、耳元のすぐ近くにあって、否応無しに
鼓動が早くなる。
「ごめん」
「え？」
わたしが驚いて声の方を見た瞬間、
ギジュンさんはチュッとリップ音を立てて触れるだけのキスをした。
「！」
「だからごめんって…嫌だった？」
わたしは俯いて、小さく首を横に振った。
突然のことではあったけど、決して嫌な気持ちではなかった。
でも…ときめかない…
心の中で、ごめんなさいと呟いた。
ダメだ、このままじゃ…
会場に着くと、ギジュンさんはわたしをエスコートしてくれて
ホールへ続くレッドカーペットを歩く。
その前方にひときわ目立つ集団があった。
たくさんのカメラ、TV局の大きなビデオカメラも
その集団の中心に集まっている。
人垣の間から、よく知る顔がちらっと見えた。
黒いタキシードに身を包んだ見慣れた顔。
ドンヘだ。
胸が、早鐘を打つ。
と、ドンヘが俯いたその先に、もう一人の顔が見えた。
ユナ。
頭を何かで叩かれたような感覚。
眩暈がしそうなほど、呼吸が苦しくなる。
ギジュンさんの腕に回した手に、知らぬ間に力が入る。
「どうし…」
ギジュンさんも、前方の騒ぎに気づいた。
そしてわたしの手を、上から大きな手で包んでギュッと握った。
「行こうか…」
わたしは小さく頷いた。
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さくらこ(プロフ) - ごんごんさん» ごんごんさん、コメントありがとうございます！半年以上前に書いたお話を読んでいただいて、その上コメントまでいただけるなんて嬉しいです。つらいお話ではありますが、読み終わったあとは、きっと幸せな気持ちになってもらえると思います( ´ ▽ ` ) (2013年11月10日 12時) (
レス) id: a388da78b1 (このIDを非表示/違反報告)
ごんごん(プロフ) - 涙が出て来て… 止まりません (2013年11月10日 8時) (レス) id: 3fe715c8fc (このIDを非表示/違反報告)
さくらこ(プロフ) - 裏琉さん、ありがとうございます^ ^ (2013年2月27日 15時) (レス) id: a388da78b1 (このIDを非表示/違反報告)
°+裏琉+°(プロフ) - はい！最後まで読みます！！w (2013年2月27日 15時) (レス) id: e11767803f (このIDを非表示/違反報告)
さくらこ(プロフ) - 裏琉さん、コメントありがとうございます！私も、同じ気持ちです。ぜひ、最後まで読んでいただけると嬉しいです！ (2013年2月27日 15時) (レス) id: a388da78b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さくらこ
| 作者ホームページ：http://id41.fm-p.jp/390/cherryhae15/
作成日時：2013年2月24日 19時
