アドラブル・バランス 7【K.N】 (ページ10)

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190.幸せな瞬間ページ10

心臓がバグバクしている。
もう本当にバグバクしすぎて、まるで絶叫マシンに乗る前みたいな感覚。
スリルがどうこう言ってる場合じゃないくらい。

課せられたミッションとしては、ごく簡単な事なのかもしれない。
だって「和也くん」と言ってしまえば、このミッションはクリアなのだから。
だけど、そうは言いつつもそんな簡単に行く訳がない。

私にとって「和也くん」という言葉は、あまりにも特別すぎて、頭の中で考えるだけでもパンクしそうになるくらいなのに。

「難問ですよ...」
「易しいでしょ」

ケロリとそう言う二宮さん。
そりゃあ二宮さんからしたらそうなんだろうけど、私からすれば超絶怒涛の難問なんですよ。

でもここで言わないのは絶対駄目って事は分かっている。
あれだけ二宮さんの事を想ってきて、やっと恋人になれたんだもん。
ここにきて名前くらいは呼べないと、本格的に呆れられちゃって、終いには嫌われてしまうかもしれない。

そんなのは絶対嫌だ。

「......和也、くん...」

だから私は覚悟を決めて、今度は俯かずにちゃんと彼の目を見て名前を呼んだ。

すると、さっきまでしたり顔をしていた...和也くん、の表情は綻んでいて。

「ンフフ。良く出来ました」

そう言って私の頭をワサワサと撫でてくれた。
ただそれだけで、世界がひっくり返りそうになるくらいに私は幸せだった。

明日、もっちー君とちゃんと話そう。
和也くんから貰ったばかりの幸せを胸に、私は決意する事が出来た。