アドラブル・バランス 7【K.N】 (ページ7)

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187.残業フラグページ7

「お疲れ様でしたー」

一日の疲労を帯びたような声でオフィスにしきりに響くその言葉。
そこでようやく、今はもう退社時間になっていたという事に気が付いた。

「Aちゃん、お疲れ様！」
「え...相葉くん帰るの？」
「うん、オレにしては珍しく早く終わったからねぇ」

「そんじゃ、お先！」って広報部のオフィスを出ていく相葉くん。
お主...自分が切羽詰まった時には半泣きの顔で私に助けを求めてくる割に、数少ない私の残業に対しては興味なしなのか！

なんて考えが一瞬過ぎったけど、過去にあまり残業をしていない理由を探ってみるとその根底には相葉くんの存在がいつも大きく関わってる事に気が付いて、その考えはすぐに消し去った。

はあ、今日は残業か...
色々とじっくり考えたい事があったんだけどな...

「A」

ふわり、と心地良い香りを感じるとともに、心地良い声が聞こえてきた。

「二宮さん、どうしました？」

声が聞こえた方を振り返ると、既に帰る準備万端で今にもオフィスを出ていく様子の二宮さんが居た。
さっきまで掛けていた眼鏡も外していて、もう仕事する気はないという事が容易く伝わってくる。

それから二宮さんは微笑んでいる。
だけど少しだけ眉間に皺を寄せている。
それはつまりどんな感情なんだろう？

「どうもこうも帰るぞ」
「あ、すいません、私まだ終わってなくて...」
「...何が残ってんの？」
「原案のコピーが少々...」
「んなもんコンビニでも出来んだろ、帰るぞ」

お言葉ですが、貴方は馬鹿なんですか？
会社で使う原案を今目の前にあるコピー機を使わずに、わざわざコンビニで大量コピーする人間がどこに居るんです？

...まぁ、とてもじゃないけどそんな事は言える筈もなく。

「そ、そうですね...ハハ」

原案を挟んだファイルを鞄に詰めて、無意識のうちに私も帰る支度を始めていた。