アドラブル・バランス 7【K.N】 (ページ5)

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185.加速ページ5

「...本当に良いの？」
「良いんだって。再会記念って事で！」

食べ終えた私ともっちー君はお店を出て、そんな会話をしていた。
それは言わずもがな、お会計の話。

もっちー君は頑なに「俺に払わせて？」としか言わなくて、私がどんなに頑張っても「良いから！」ってケラケラ笑われるだけだった。

それでも、全額払わせた事はかなり申し訳なくて、ズーンと分かりやすく落ち込んでいると

「Aちゃんはやっぱり、完全無欠な女の子じゃないかもね？」

そんなもっちー君の声が聞こえてきた。

「え...？」
「甘える時には甘える。それが、Aちゃんには足りないんじゃない？」
「そうなの、かな...」

甘える時には甘える、かぁ......
私的にはそれなりにみんなに甘えさせて貰ってるような気もするけどなぁ。

うーん...と考え込んでいると、ほんの少し先を歩いていたもっちー君が私の横まで戻ってきて、私の頭に大きな手をポンと乗せた。

「...変わらないね、Aちゃんは」
「もっちー君？」

私の頭に乗せた大きな手を、今度は軽くポンポンと動かしたもっちー君。

「俺、あの頃Aちゃんの事が好きだった」

嬉しそうに笑うもっちー君。
もしかして、さっきの笑顔の理由も...？

「あの頃」って言われている筈なのに、一度始まってしまった動悸はなかなか治まってはくれない。
治まるどころか、どんどん加速しているような気もする。

「勿論、その気持ちは今も変わらないよ」

......ああ、これはそういう事だったのか。

「俺はAちゃんが好き」

こんな未来が待っているから、私の動悸は治まろうとはしなかったんだ。