アドラブル・バランス 7【K.N】 (ページ28)

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208.正解ページ28

トボトボと夜の道を歩く。
いつもだとこの夜の道に多少の恐怖感を抱いているけど、正直そんな感情は今の私には持ち合わせていない。

「悪い。お前の事送ってやれる自信ねぇわ」

そう言って玄関の扉を閉めた和也くんが、その瞬間から私の視界に入る事はなかった。

...酷い事をしてしまった。
絶対に許されない事をしてしまった。
後戻りなんて出来ない程に、酷い事。

一歩ずつ和也くんの家から離れていく度に、私のしてしまった事の大きさを知る。
望月くんから指示されたあの時から覚悟はしていたつもりだった。

でもそれは、小さな小さな『つもり』であって。
そんなミジンコサイズのような『つもり』で、悲しさにせよ虚しさにせよ、そんなものが回避できる訳なんてなくて。

「...ふぅっ...ううっ...」

私の弱い心が痛まない訳もなく。

「うっ...ううっ、ひぃ...ふぅっ...」

容赦なんてなく、私の頬には涙が流れるばかりだった。
こうなってしまう事は分かっていたけれど。
やっぱり我慢なんて出来なかった。

今の私にはもう、何が正解なのかが分からない。
現実に従う事が正しいのか、現実に背く事が正しいのか。
答えを出した今でも、分からない。

一生をかけて考え抜いても、絶対に分からない気がする。

・

どれくらいの時間歩き続けていたのかはよく分からないけど、私は自宅付近まで来ていた。

何時なんだろう？
そう思って左手に握りしめ続けていたスマホで時間を見ようとした瞬間に、ピロロロと単調な音がスマホから鳴り始めた。

『着信櫻井翔』

その文字を見て、何故だかまた涙が溢れ出そうになった。