アドラブル・バランス 7【K.N】 (ページ26)

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206.UNPLEASANT ページ26

『私と別れてください』

その言葉を吐いたのは紛れもなく自分だというのに、何故か私の頭は誰かに殴られたような衝撃を受けていて、グワングワンと目眩を起こしてしまいそうな感覚に陥っている。

和也くんの目を見ていた筈なのに、いつの間にか私の目は彼の足元ばかりを映している。

「...は？」

頭上から短い言葉が聞こえてきた。

「...ごめんなさい...」
「いや、何？いきなり何なの？」

どんな声色かと聞かれれば、それは怒りを帯びた声色に似ているとしか言えない。
ブルルと身震いしてしまう程、この状況を冷静に考えられない私。

とにかく望月くんの指示通りにしないと。
先生との約束も、和也くんの事も、守れない。

「......好きな人が、居るんです...」

好きな人が居るというのは事実。
でもそれは、私の目の前に居る和也くんの事であって、こんな嘘を吐く相手が彼ではない事なんて十二分に分かっている。

「...好きな人」

ポツリと呟いた和也くん。

一秒ごとに別れが近づいてきている事が強く感じられたその一言に、私の動悸は激しさを増すばかりだった。

「望月？」

ドクン...と大きく波を打った心臓。
恐る恐る和也くんを見上げると、彼は心底不快そうな表情をしていて。
私の心は引きちぎれそう。

「...図星？」

黙り込んでばかりいる私に今度はそんな言葉をかけた和也くん。
怖くて彼を見る事は出来ないけど、想像する事は出来る。

きっと、さっきよりももっと不快そうな表情を浮かべている。
そして声色は、少しだけ自重じみた笑みを含んでいる。
どうしてか、そんな気がする。