アドラブル・バランス 7【K.N】 (ページ23)

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203.SALTY DROP ページ23

真剣に考える時間が欲しかった。
だけど本当は、そんな時間なんて必要なかったのかもしれない。

だってどちらにせよ、私は私だけでは決めきれない事なんて明白だから。

「ねぇ、Aちゃん？」
「......」
「どっちを選べば良いのかなんて、分かりきった事でしょ？」

ほら、私は所詮一人じゃ何にも出来ないから。

「...俺、何するか分かんないよ？」

心の底から楽しそうに口角を上げている望月くんを見ていると、私が決めるべき選択肢こそ、明白になってくる。

「...分かった」

けれど、それが本当に

「私、貴方を...選びます」

私の意志なのかは、明白ではない。

だって、ほら。
ポトリポトリと私の目からは次々としょっぱい雫が零れていっている。

「どうしたの？」って笑う望月くんだけど、私にも分かるようで分からない。
...分からない方が、良い気がする。

「そうと決まれば、Aちゃん」
「...なに？」
「早く上司と別れてきて？」
「...っ...」

息を飲んだ。
飲まざるを得なかった。

どうして今まで一度も気付く事が出来なかったんだろうか。

「報告は明日までにしてあげるから」

目の前で笑うこの人に心がないって事に

「ほら早く」

どうして、気付けなかったんだろう。

「本当に俺、何するか分かんないんだからね？」

どこで道を踏み外してしまったんだろう。