アドラブル・バランス 7【K.N】 (ページ21)

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201.残酷な選択肢ページ21

あの日から今この瞬間まで。
一日だって、あのときの出来事を忘れた事はなかった。
私にとって篠田先生は、重たい十字架のような存在になっていて。

忘れられる筈がなかった。

「Aちゃん、あの先生との約束守りたいよね？」
「...どうしてもっちー君が、そんな事言うの...」

分からなかった。
どうしてさっきからずっと、合間に私が篠田先生と交わした約束の事を挟んでくるのか。

「そりゃ勿論、Aちゃんの事が好きだから」

一見すると分からないままだけど、頭を回転させられれば簡単な事だった。

でも

「俺と付き合ってくれるなら、先生とAちゃんの約束の事は誰にも言わないよ？」

それはあまりに、理不尽で。

「俺と付き合ってくれないんなら、先生とした約束、勝手に破っちゃうよ？」

あまりにも、残酷な条件だった。

「そんなの...」
「どうする？Aちゃんはどっちを選ぶ？」

もっちー君は相変わらず楽しそうだった。

「どっち」とは、先生との約束を守るために自分と付き合うのか、先生との約束を破ってでも和也くんとこのままの関係でいるのか。
彼が言いたいのは恐らくそういう事なのだろう。

本当は分かっている。
彼の言っている事は、十分おかしいって。
だってこんなの、脅しみたいなもの。
こんな人になんて構う必要はない。

だけど、私にとってこれはそんな簡単に決められる事なんかではない。

傍から見ればこんなもの、ただの過去でしかないのかもしれない。
先生との約束なんて、とっくの昔に時効が過ぎていたのかもしれない。

......おかしいのは、私の方だ。