アドラブル・バランス 7【K.N】 (ページ14)

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194.走る衝撃ページ14

『......だけど私、もっちー君の事は異性として意識する事は出来ない...』

私がそんな返事をしてから、暫くは私ともっちー君との間に沈黙が流れていた。
弱い私は、その間ずっともっちー君の顔を見る事は出来なくて、顔を俯かせ続けていた。

「...Aちゃん」
「......」
「顔、上げてよ」

どれくらい経ったのか分からないけど、もっちー君のいつもの優しい声が聞こえてきた。

恐る恐る顔をゆっくり上げると、笑っていた。
もっちー君は、ニコニコと笑っていた。

不謹慎、というか失礼...だけど。
ニコニコ笑うもっちー君に違和感を覚えた。

「好きな人が、居るとか？」
「...お付き合いしてる人が、居て...」
「あ、もしかして昨日一緒に居た上司の人？」

もっちー君の言う「昨日一緒に居た上司の人」とは恐らく和也くんの事なのだろう。

「...うん、その人とお付き合いしてる」

頭の中に、和也くんの顔が浮かんだ。
ただそれだけなのに、何だか泣きそうになって、今すぐ会いたくなる。

「その人の事、本当に好きなんだね」
「...うん...」

正面に座るもっちー君は、眉を八の字にさせて困ったような、そんな表情をしていた。

「...そっか。だったら仕方がないよ」

すると、もっちー君の表情がまた変わった。
さっきみたいにニコニコ笑っている。

一言で言うと、物凄く楽しそうだった。

「先生との約束、守れない事にさせちゃうね？」

──『高本』──

──『今日のこの事は、俺とお前の秘密だ』──

「...ど、どうして...」

──『...先生と約束、出来るよな？』──

まるで頭を鈍器で殴られたような衝撃が走った。