アドラブル・バランス 7【K.N】 (ページ12)

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192.サドとアホページ12

あれからまたずっと、もっちー君の事を考えながら仕事に励んでいた。
気が付けば、パソコンのキーボードで『も』って打ったりもしていた。

「お疲れ様でしたー」

帰社時間になって、周りの社員がゾロゾロと帰り始める。
...結局私は、良い方法を見つける事がないまま、もっちー君の元へと向かわなければならなくなった。

沈んだ気持ちを抱えて、ノロノロと帰宅準備を始める。
早く行かないと、喫茶店で待っているかもしれないのに、私の気持ちは一向に沈んだまま。

はぁぁ...と大きな溜息を一つ吐いていると。

「A」

聞き慣れた心地良い声とともに、これも受け慣れたデコピンが私の額に降ってきた。

「あの、痛いんですけど...」
「お前がノロノロしてっからだよ。オレに非はありませーん」

ムカつくような、はたまた可愛いような表情をしながらそんな事を言う和也くんは最早ただの確信犯だ。

だけど、たったそれだけで気持ちが軽くなっている私はなんて単純でアホなやつなんだろうと改めて思い知らさせる。

「それで？お前今日どうすんの？」
「あ...これから人と会う約束してて...」
「そっか、じゃあオレ帰ってるわ。家着いたら連絡して」
「分かりました」
「ん、じゃあな」

そう言って私の頭をワシャワシャっとしてオフィスを出ていった和也くん。
周りの社員からは、冷やかしの声と、刺さるような冷たい視線。
これもまた、サディストの罠なのだろうか。