アドラブル・バランス【K.N】 (ページ28)

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28.差し出された手の意味ページ28

「はぁ...疲れた...」

あのあと、仕事が途切れる事はなく、せっかく櫻井さんに誘ってもらっていたお昼ご飯を食べに行く事すら出来ず。

左手首につけられた腕時計を見ると、時刻はもう16時を回っていた。

「Aちゃん、おつかれぇ」
「あ、大野課長。お疲れ様です」
「相葉ちゃんのヘルプ、大変そうだったねぇ」
「まぁ、ちょっと大変でした...フフッ」

そう言った私に「んじゃ、頑張ったご褒美」って言って大野課長の手から私のデスクに置かれたのはカフェオレとチョコレートだった。

「え、良いんですか...？」
「うん、良いの良いの。貰っときなよ」
「じゃあ...ありがたく頂きます！」
「ンフフ、はーい」

手をヒラヒラさせながら自分のデスクに戻りかけて2歩進んだ大野課長は、また2歩戻ってきた。

今度は手を前に差し出している。

「えっと...大野課長？」
「二宮くんのとこ、行くんでしょ？」
「えっ...？」
「相葉ちゃんから訊いたよ。2人で行くんでしょ？」
「あ、はい...」
「二宮くん、多分早く来て欲しいだろうからさ」
「......」
「Aちゃんの仕事、全部ちょうだい？」

サラーっともの凄い事を言った大野課長の顔は、いつも通りニコニコしていた。