アドラブル・バランス【K.N】 (ページ23)

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23.NOT STOP ページ23

柔らかい声が優しく響いた。

「おはよう、Aちゃん」
「あ、大野課長。おはようございます」
「うん、おはようさん。ンフフ」

暫くして、ぞくぞくと出社し始めた広報部の社員たち。
その中でも一際スローペースで歩いている大野課長は、かなり目立っている。
そして今日も、相変わらず眠たそう。

「あ、そうだ。ねぇ、Aちゃん」
「はい？何ですか？」
「Aちゃんにさ、会社案内の編集をお願いしても良いかな？」
「えっ、でもそれって...」
「そうそう。これ二宮くんの仕事なんだけどね？」

昨日の帰り際。
二宮さんより少し早く仕事が終わり、帰る準備をしていた私の横で大野課長が二宮さんに仕事を頼んでいるのを聞いていた。

それが今、私に頼まれている会社案内の編集だった。

「あの、二宮さんに頼んだんじゃ...」
「うん、そうなんだけどね？二宮くん、今日お休みでね？」
「お休み、なんですか...？」
「お休みらしいよ？熱が出たんだって」
「...熱......」

どうしよう。
私、二宮さんの家族でも彼女でもないくせに。
...二宮さんの事が気になって、仕方がない。

ご飯とか、どうするのかな。
ちゃんと体を温めて寝てるのかな。
二宮さんの事だから、おうちで仕事とかしてないかな。

考え出したら止まらないほどに、私の心配も止まらなかった。