深愛 〜凛とした強さで〜 ４

＊164＊ ページ17

−広臣side








PM 10:00



…閉店作業が終わり、



スタッフのみんなと他愛ない話をしながら、裏で一服する。








(…そういえば…)



携帯を放置していたことに気づき、



ロッカーに潜む鞄から取り出してチェックすると…








‘(不在着信)A’



広臣「えっ…」








彼女からの着信の通知が、５分おきで３件も入っていた。








(緊急に違いない…)



…胸騒ぎを感じながら、即折り返す。









pull...



pull...








『留守番電話サービスに…』



広臣「なんで出ないんだよっ…！」








敬浩「登坂っち〜。今からみんなでメシ行こうと思うんだけど、よかったらお前も…」



広臣「すいません！急用できたんで、お先です！！」



敬浩「えっ！？ちょっと！登坂っちー！？」








…Aのことになると、周りが見えなくなる俺。



広臣「お疲れっした！」








他のことなど考えてる余裕もなく…



俺は店を飛び出した。









‘ザーーーッ…’



…外はハンパなく降りしきる雨。



傘をさして立ち止まり、もう一度彼女に電話をかける。








pull...



pull...



A『……はい』








(繋がった…！)



広臣「もしもし！A！？どうした！？今どこ！？」








…いつもの冷静さは、どこへ行ったんだろうか。



A『…やっぱり…(笑)。そんな感じでかけてくると思った…(笑)』



完全に平常心を失くした俺に語りかける彼女の笑い声は、とても震えていて…。








(…？)



…どこからか一致する、その声。



細い木の横から見える小さな人影…。








『まさか』と思い、ゆっくり近づくと…








そこにいたのは、寒さに打ち震え、蹲る彼女。



広臣「……」








…俺は唖然とした。

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