149:side H ページ49
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寒空の歩道で…
少し先に、華奢な背中を見つけた瞬間…“偶然”という名の奇跡に、感謝した。
大声で呼びかける訳にも、いかず……かといって、この奇跡を逃したくもなくて。
立ち止まっている背中に追いついてから、肩を軽く叩いたら…一気に、全身が硬直した彼女。
やがて…呼吸すら、危うくなりそうになって。
慌てて、正面に回り込んで…顔を覗き込んだ。
「朱里さん、大丈夫⁉」
真っ青な顔で…少しの間、俺を見つめていた彼女は………
「………と…さか……さん………」
俺を認識した瞬間…その表情を、和らげた。
「ごめん! 急に肩触ったら、ビックリするよね? ホント、ごめん!」
すげぇ、申し訳なくて…朱里さんの目の前で、両手を合わせる。
しばらくして………
彼女の、硬直していた身体は…
徐々に解けていった………
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「マジで、ごめんね。」
近くのカフェに入ってからも…顔色の戻らない彼女に、何度も謝罪した。
そんな、俺に…彼女は、笑顔を見せる。
「もう、大丈夫ですよ。」
「ホントに?」
「はい。」
彼女の言葉と…いつもと変わらない笑顔に、ようやくホッとした。
「でも…会えてよかった。」
「えっ…」
「今日会えるなんて、思ってもみなかったから…会えて、嬉しいよ。」
ホッとした途端…本心が、言葉になる。
そんな自分が、なんだか気恥ずかしい。
「食事、してた?」
俺の問いかけに、一瞬…表情を曇らせた彼女。
「木暮さんと…」
どこか、口の重い彼女に…何かあったんだと、察した。
「じゃあ、今日はカフェだけだね。」
「えっ…」
「えっ? まだ、食べられる?」
「えっ…」
「食事の約束、忘れちゃった?」
軽く、探るような視線を向けてみる。
「覚えてますよ。大丈夫です。」
彼女の笑顔に……少し、安心した。
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カフェを出て、タクシーを拾う。
「反対方向だから。」と拒む彼女を、何とか説得して…タクシーへ、一緒に乗り込んだ。
「すみません。」
心底申し訳なさそうに、頭を下げる朱里さん。
「気にしないで。俺が、こうしたかっただけだから。」
「でも…」
「俺が。朱里さんと、もう少し一緒にいたいだけだから。」
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愁(シュウ)(プロフ) - 実際に、何回か呟いてみたくらい。(笑) でも、関西弁でお困りの時は、いつでも言うて下さいね!o(^-^)o(笑) (2018年5月24日 22時) (レス) id: 2a9117ff92 (このIDを非表示/違反報告)
愁(シュウ)(プロフ) - 舞花さん» 遅くなって、すみません!m(_ _)m そんな事、ないですよ。関西人以外の方には、そう聞こえてるんか…って、新たな発見があって、楽しいんです。(^-^) 例えば…「おん。」っていう返事。実際は、「うん。」って言うてるはずやけど、そう聞こえてるんか…って。(^-^) (2018年5月24日 22時) (レス) id: 2a9117ff92 (このIDを非表示/違反報告)
舞花(プロフ) - おはようございます♪愁さんの呟きを読んで『あー、私の書く関西弁きっと関西の方が読んだら違和感ありまくりなんだろうなー』と思ってしまいました。関西弁、教えて欲しいです(笑) (2018年5月12日 9時) (レス) id: 06beefc88f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:SHU
作成日時:2017年11月17日 0時