教えて、先生。 (ページ39)

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「一番自信なさそうだったくせに、やるじゃねーか！よし、持ってけドロボー」

おじさんっぽい口調でそう言われるけど。
幼少期のお兄ちゃんの姿が蘇る。
たった一匹の赤い金魚を、嬉しそうに見つめていたお兄ちゃん。

「...私、一匹でいいです」

「えー？何だよ、勿体ないな」

「一匹だけで、いいんです」

眉をひそめるヒチョル先生に、きっぱりとそう言った。
お兄ちゃんも、それを望んでるはず。

「ふーん...ならいいけど。じゃあチャニョル、約束通り早く焼きそば買ってこいよ！先生の分も♡」

「ええ！？！？先生まで！？くっそ～...」

がっくりと肩を落としたチャニョルくん。
...うーん、一人で行かせるのも、流石にかわいそうか。

「チャニョルくん、私ついていこうか？」

「え！？」

振り返るチャニョルくんの顔がぱあっと輝く。
なんか、わんこみたい。

「一人で行くのも寂しいでしょ？」

「ありがと、A！やっぱ優しいのはAだけだわ！」

途端にがしっと手を掴まれて、思わず声が出る。

「えっ」

「そうと決まればさっさと行くぞ～！エリ、ベッキョン、今から別行動な！
30分後に広場集合～！ってことで！」

私の手を握ったまま、機嫌よく歩き出すチャニョルくん。
私は慌ててそれについていくしかできなかった。
咄嗟に振り返ると、呆れた顔のベッキョンと、頑張れとでも言いたげなエリが手を振っていた。
...これは私、とんでもない仕事を引き受けちゃったかもしれない。

＊＊

「ったく、ホントあいつら腹立つ！俺すっかりいじられキャラじゃん！Aがいなかったら俺、どうなっていたことか...」

「う、うん...」

「Aもそう思わね！？」

いきなり顔を近づけられる。
鼻と鼻がくっつきそうな距離。
その端正な顔立ちに、思わず顔が熱くなる。
チャニョルくん、ほんとにイケメンだ...。

「そ、そだ、ね」

「だろ～？あーもう、あいつらの焼きそばになんか入れてやんない？仕返してやる！」

「ちゃ、にょるくん」

「うん？」

振り返る彼。...また顔が近い。

「...手」

「え？...あぁ、テンション上がってノリで繋いじゃったの、そのまんまだったわ！ゴメンゴメン」

がっちりと握りしめていた手を、チャニョルくんは明るく笑いながら離す。
...あー、ドキドキした。