教えて、先生。 (ページ32)

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「え…と、その……せ、せいりつうで…」

声が震える。
ああーーーーーっ、もう！だから嫌だったのに！

流れる沈黙。
気まずい。気まずすぎる。
どうすることも出来ず、俯いたまま体を縮めた。

「……あー」

「っ、」

静まり返った部屋に、先生の声が唐突に響いて、思わず顔を上げる。
先生はイスに座ったまま、額を押さえていた。

「せ、せんせ…？」

「…ほんっとごめん、気使えなくて。何年養護教諭やってんだよ俺は…ああもう」

先生はそう言うと、腹立たしそうに頭をぐしゃぐしゃ掻きむしる。
こんな先生の姿を見るのは初めてで、そんな状況じゃないって分かっているのに、なんかきゅんとしてしまう。

「Aさんごめん、わざわざ言わせちゃって。これから気をつけます…」

「え、いやっ、そんな大丈夫です！」

目をこちらに向けたイェソン先生は、しおらしく頭を下げた。
謝罪なんて求めてなかったから、びっくりして思わず先生の肩を掴んでしまう。
何やってんだ、私。
肩に手を置かれた先生は、きょとんとして顔を上げる。
目と目がばっちり合って。
先生の切れ長の瞳に見つめられると、どうしても動けなくなる。

「…ふっ」

「え！？」

「Aさん、何がしたいの(笑)慌てすぎ(笑)」

「えっ、あっ、はは…」

至近距離で、先生の素の笑顔を見る。
30代とは思えない無邪気な表情だ。
…かわいい。

と、考えているのも束の間、また酷い頭痛が私を襲った。

「、ったあ…」

「あー、大丈夫？とりあえず横になって。動かない方がいい」

「…はい」

ベッドに潜り込んで丸くなる。
立っているよりは大分楽だけど、痛みは今もなお続いていた。

「今昼休みか…授業、あと2時間だけど、どうする？あんまり辛かったら早退する？」

「…いや、なるべく授業には出たいので、暫く休んでます」

「うん、分かった」

だって早退なんてしたら、帰ってくるなりお兄ちゃんが飛びついてくるもん。心配性だから。
迷惑はかけたくないんだ。
…でも正直、もっと先生と2人きりでいたいから、っていうのもあった。

「薬は飲んでこなかったの？」

「ちょうど切らしてて…」

「そっか…とりあえず、保健室に常備してある薬出すね」

そう言って、先生は横にある棚をあさり始めた。
なるほど、最初来た時から気になってたけど、大量にある引き出しの中には薬が入ってるんだ。
左側の壁一面に並んだ棚は、どこか千と千尋の○隠しを彷彿とさせた。