教えて、先生。 (ページ29)

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ドアが閉まる音が響く。
…沈黙。
しんとした保健室に、私とイェソン先生2人だけ。
さっきの先生の鋭い声が、なんだか怖く感じて、私は彼の顔を見れないでいた。

ねえ先生。今、どんな顔をしてるの？
どんな思いでいるの？

「…Aさん」

「っ、はい」

ふいに名前を呼ばれて、反射的に返事をする。
そして。

ぎし。

「、」

横になった私の顔の横に、手が置かれた。
スローモーションのようだった。
徐々に、徐々に、先生の顔が近づいてきて。
とうとう彼の顔が目の前に来たとき、私はようやく、押し倒されてるような体勢になっているということに気付く。

…え、なにこれ。
先生？

声が出なくて、目を見開くことしかできない。
その間、1時間くらいに感じた。

さらりと、頭に感触を感じる。

「っ」

思わず肩がぴくりと動いてしまう。
何故か先生は、私に覆いかぶさるような形で、私の頭を撫でていた。

「…せ、んせ？」

ああ、ようやく声が出た。

「…ほんとに、ほんとに、心配した」

すぐ近くで聞く先生の声は、私の耳にじんわりと優しく響いて。
何故だか分からないけど、涙が出そうだった。

その手は、するりと頭から髪へ向かう。
なんだか寂しそうで、でも優しい表情。
その目は、愛おしいものを見るように愛がこもっていたけど、私はうっすらと、私を通して別のものを見ているようだ、そう思った。

「…せんせい。ちょっと」

彼の胸を少し押すと、先生はハッと我に返ったように目を丸くした。
そして、慌てて起き上がる。
0に等しかった私たちの距離は、また元に戻った。

「…っ、ごめん」

先生も無意識だったのだろうか。

「大丈夫です」

何故だか妙に冷静な自分がいた。

「…Aさん」

「はい」

返事をする。

「…俺、Aさんを守るから。
先生と、して」

『先生として』
その言葉が頭から離れない。
そう言う先生には、いつもの優しい雰囲気に混じって、どこか重たくて悲しい姿を感じた。