教えて、先生。 (ページ24)

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シャツを腕まくりして、ハンドルを握りしめるその男らしい後ろ姿に、思わずドキッとする。
あー…反則だよ。

｢で、家どこ？｣

ぼーっと見とれていると声をかけられて、思わず肩が震えた。

｢え、えと、本当に近いんですけど…｣

｢いいよいいよ(笑)｣

｢近くにコンビニあるじゃないですか。その裏の通りの…クリーム色の壁のマンションで｣

｢あー、OK｣

先生のその言葉を合図に、車は走り出す。
かたんかたんと小刻みに揺れる車内は、何故かとても心地よくて。
最初はぴんと伸びていた背筋も、だんだん楽な姿勢に戻って、気づけば背もたれに体をうずめていた。

｢足、どう？まだ痛い？｣

｢え？あ…｣

我に返った。幸せな瞬間を引き裂くように、痛みがまた戻ってくる。
正直動きたくないくらいの痛さだったけど、これ以上先生を心配させたくない。

｢……だ、いじょぶです｣

｢何、その間。本当に？｣

｢う゛｣

見抜かれてる。

｢…すみません。まだ結構痛いです｣

｢嘘つくの下手だねえ｣

白状すると、先生はおかしそうに笑い声を上げた。
恥ずかしいけど、先生の笑い声が聞けて、なんか嬉しい。

｢うーん…どうしようかな…通り道にドラッグストアあるよね？寄っていこうか｣

｢えっ｣

｢結構重傷みたいだからさ｣

｢あ、ありがとうございます…｣

先生といられる時間が増えて、ちょっと…いや、かなり嬉しかった。
にやけそうになる頬をつねりながら俯く。

その後少し車を走らせ、ドラッグストアの明るい光が見える。
慣れた手つきで車を止めると、先生はシートベルトを外した。

｢じゃあ、買ってくるからここで待ってて｣

｢えっ…私も行きます｣

｢歩くのつらいでしょう。無理しないで｣

｢やっ…｣

できるだけ、先生と一緒にいたかった。
わがままかな。
食い下がる私に、イェソン先生は優しい微笑みを向けた。

｢先生は、Aさんのことを心配してるんだよ。保健医として、怪我人歩かせるわけにいかないでしょ。
すぐ戻るから。大丈夫、寂しくないよ｣

その言葉とともに、柔らかな手が頭に乗せられる。
…え？
状況が理解出来なくて、ぽかんと口を開けていると、先生は目を細めて、自動ドアへ歩いていった。
…いま、私、頭撫でられた？
…うそ。
頭のてっぺんから、じわじわと温かいものが広がっていって、
口元が緩むのを抑えられなかった。