教えて、先生。 (ページ17)

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やさしく、それでも慣れた手つきで包帯を巻く先生。

｢はい、できたっ｣

彼はそう言って、無邪気な笑顔を見せた。
笑うと表情が幼くなって、かわいい。

｢ありがとう、ございました｣

｢いえいえ。それにしてもAさん…｣

｢はい？｣

｢結構ドジなんだね｣

え。

その言葉に思わず目を丸くして顔を上げると、先生はいたずらっぽく笑ってた。

｢ち、違いますよ今日はたまたま！｣

｢どうかな～？｣

こんな小さな言い合いでさえ、幸せに思えた。

｢それにしても俺、生徒の中ではAさんと一番親しいんじゃないかな、今は｣

｢えっ？｣

｢ほら。保健医とは言っても、どこかの担任や教科を持つわけでもないし、結構暇なんだよね。
でも今年はAさんとたくさん話せて嬉しい。って、喜んじゃいけないか。生徒の健康を祈らないと(笑)
…って、どしたの？｣

｢…｣

｢おーい？Aさーん｣

｢あ、はいっ！｣

何度も呼びかけられて、やっと我に返った。
私が、いちばん？
いちばん先生と仲がいい？
私とたくさん話せて、先生は嬉しい？

…う、わわわわ

顔がぶわあっと赤くなるのが自分でもわかった。
気付かれたくなくて、慌てて両手で頬を覆う。

｢すいませんぼーっとしてて！あは、あははは｣

｢…Aさん、もしかして照れてる？｣

｢え゛｣

図星である。

｢ち、ちが、ちがいまっ｣

｢本当かな～？｣

からかうようなニヤニヤ笑いも、すごく愛おしくて。
こうやって先生と笑い合えることが、私にとっては最上級の幸せだった。

キーンコーンカーンコーン…

｢あ。ほら、もう五時間目終わっちゃったよ。そろそろ教室戻らないと｣

｢え、あぁ…そうですね。ありがとうございました｣

｢いーえいーえ｣

｢じゃ、失礼しま…｣

言いかけたその時、先生が思いついたように手を叩いた。

｢あ、そういえば｣

｢はい？｣

｢今日は大丈夫なの？体の調子。具合が悪いとか｣

｢はい、今日は何ともないですよ｣

心配してくれたのかな、なんて嬉しく思う。

｢うん、それならよかった。何かあったらまた来なよ？｣

｢分かりました。それでは…｣

ぺこぺこと頭を下げながら、扉を閉める。
まだ心臓はどきどきしていた。