教えて、先生。 (ページ2)

今日:7 hit、昨日:2 hit、合計:35,482 hit

001 ページ2

｢はぁぁ…｣

昨日からため息が止まらない。
何故って？
それは、今日が入学式だから。
鏡に映る私は、真新しい制服に身を包んで、不機嫌そうな顔で突っ立っている。
我ながらふてぶてしい。

昔から、父親は転勤が多かった。
母親は私が小さい頃に病気で亡くなって、父は男手一人で子供を育てなければならなくなった。
必死で働き、祖父母や親戚を頼ったりしながら、私を育ててきてくれた。
引越しばかりで友達がなかなか出来なかった私は、正直こんな暮らしに嫌気が差していたけど、
それでもなんとか、反抗期も迎えずに過ごしてこれたのは…。

｢わあ、A～、似合ってるよ！｣

いつもと変わらないのびのびした声をかける、このイーシンお兄ちゃんのおかげだ。

｢お兄ちゃんありがとう…｣

｢ん～、やっぱり不安？そうだよね、中学2年の途中からは転勤が少なくなって、友達も増えてきた矢先の引越しだもんね。｣

｢そう…しかも転校先が中高一貫校なんて！｣

そうだよ。普通の高校への転校ならまだ良かったんだ。
でも、受験を目前に控えた私を受け入れてくれる学校はここしかなかったのだ。

｢中高一貫校なんて、もうグループ出来上がってるじゃん！絶対友達できないよ～…
夢の高校青春ライフが…｣

考えれば考えるほど気分が落ち込む。
そんな私を励ますように、お兄ちゃんが肩を優しく抱いた。

｢気持ちは分かるよ。でもお兄ちゃんは、Aはすぐ学校に馴染めるって信じてる。だってこ～んなにいい子なんだもん！｣

｢…お兄ちゃん…｣

｢ぼくも頑張るから、Aも頑張ろう？
何かあったらぼくの教室に来ていいからね｣

そうだ、大変なのはお兄ちゃんも同じだ。
天然でボケてる不思議くんなお兄ちゃんだけれど、こういう時はすごく頼りになる。

｢…うん、ありがとう、少し元気出た｣

｢それならよかった～！ほら、もう時間だから、行こ？｣

にこっと微笑んで私の手を引くお兄ちゃん。
その手の暖かさに安心しながら、私は一歩踏み出した。

一体、私の高校生活はどうなるんだろう…。