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『…妹がいるの。とっても可愛くて
優しくて、思いやりのある自慢の妹』
酷く愛おしそうな目で話す人だと思った。
『あの子を守るには私が強くないといけないでしょ?だから泣きたくても辛くても笑ってるの』
『そうしていればいつか、どんなことにも怯えることのない強い人になれると思ってるから』
『先生はお母さんとお父さんがいないでしょ?だから大変な分、あの子には何の心配もせず普通の幸せな暮らしをして欲しいの』
それは、教師の顔ではなかった。
ただ妹の幸せを願う立派な姉の顔だった。
『……だけどね。きっと、私じゃ守れない』
質問した生徒には聞こえなかったようだが俺の耳にはその呟きがハッキリと聞こえた。
悲しそうで苦しそうな声だった。
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俺が話を終えると、彼女はお礼を言って足早に去って行ってしまった。顔はよく見えなかったけれど見送った後ろ姿は何処か寂しそうに思えた。
俺には浅見先生が言っていたことの”本当の意味”が分からなかったが、彼女には理解出来たようだ。
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「ーーーーーー報酬はお姉ちゃんの正体を教えること。
お姉ちゃんはある国家の工作員だったの。教師は副業兼…リラックス効果を求めるために始めたものだと思う」
そして現在。ソファの上で長い足を組んだ浅見Aが淡々と機密情報を喋っている。
黒いハイネックのニットにスキニーパンツという、
彼女の振る舞い方によく似合った服装だと思った。
隣に座っている赤井の趣味とそっくりだ。
「多分人を殺したことだってあるし、仲間を殺された経験も沢山してきたんだと思う。お姉ちゃんにとって学校は”安心出来る居場所”だったのかもしれない」
「……」
「貴方にお姉ちゃんのことを聞いて、あれから随分悩んだわ。今私が何をするべきなのか」
気の所為か、彼女の雰囲気が少し変わったと思った。以前会った頃は寂しそうで何かに怖がっていたようだったから。
けれど今の彼女の瞳に不安や哀愁の色はなかった。
揺らぐことのない、真っ直ぐで綺麗な色に見えた。
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モミジ(プロフ) - この作品、最高です!この作品を読んで感動して泣きました。新作も読んで見ます!これからも応援しています! (2019年5月5日 16時) (レス) id: d4cb7d7d86 (このIDを非表示/違反報告)
ringo6349(プロフ) - こんばんは!完結おめでとうございます!ずっと私の中で物語を完結させたくなくて読めなかったのですが読めてよかったです。今回もとても素敵で好きなお話でした。本当にてなさんの書かれる物語が大好きです!忙しいので時間はかかるかもしれませんが新作も絶対読みます (2019年4月26日 22時) (レス) id: 66d3f8785b (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - 華さん» 嬉しい限りでございます…複雑な心境を書くのがすごく難しかったです。コメントありがとうございますー!! (2019年3月29日 14時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - すごいです…。私、占ツクの小説で泣いたの、初めてです。夢主の悲しみとか嫉妬心とかが分かりやすくて、一気に読んでしまいました。完結おめでとうございます!! (2019年3月28日 21時) (レス) id: 1c08efcab1 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - 蓮-Ren-さん» ありがとうございます!そう言っていただけると凄く嬉しいです…(´∇`) (2019年3月27日 13時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:てな | 作成日時:2019年3月21日 16時