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*
ーー夫が、家に帰って来なくなった。
(…それもそうか)
メールも電話もない。
今日で一週間ほどになる。二日三日ぐらいは平常時でもあったが、こんなに長い期間降谷に会わないことは今までになかった。
さっき彼の部屋を物色してみたら書類やシャツが無くなっていた。恐らく私が寝ている間に持っていったのだろう。
｢……｣
一人きりの夕食もこれで七日目だ。相変わらず不味い夕飯をゆっくり咀嚼し、たまに何となく向かい側の椅子に視線を送る。
勿論誰も座っていないし、この先誰も座ることは無いだろう。
｢寂しい？……私も、さみしい｣
大好きな主人と会えなくて余程寂しいのか
最近ハロは毎晩夜中まで起きている。足元でドックフードを食べるハロに力なく笑いかけた。
(…いつぶりだろう。この気持ちは)
お姉ちゃんがいなくなった時もそうだった。どうしようもない喪失感に襲われて、何をするにも頭が上手く回らない。
降谷零という人間は、私にとって”欠けてはならない大切な人”だったのだ。姉と同じように。
｢……嘘つき｣
貴方が傍にいなかったら、誰が私を守ってくれるの？
_______________
『これ以上君の傍にいることは出来ない。
君の幸せを願っているよ。 降谷』
テーブルの上に乗った薄っぺらい書き置きを
起き抜けの頭でぼんやりと咀嚼する。
頭に浮かんだ言葉は、『やっぱり』と
『どこまでも最低な男』…の二つである。
メモの隣には離婚届が置いてあった。降谷零と書かれた名前の横にしっかりと印鑑が押されている。その紙を指で撫でて、フンと鼻で笑った。
｢……さいってー｣
彼の部屋に私物は一切残っていなかった。あるとするなら、あの日私の肩にかけたぶかぶかのジャケットぐらいだ。
もう戻ってくるつもりはないのだろう。
不思議と涙は一滴たりとも落ちなかった。離婚届を掴み、出かける準備を開始する。勿論行き先は決まっていた。
ーー市役所、それから毛利探偵事務所である。
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モミジ(プロフ) - この作品、最高です！この作品を読んで感動して泣きました。新作も読んで見ます！これからも応援しています！ (2019年5月5日 16時) (
レス) id: d4cb7d7d86 (このIDを非表示/違反報告)
ringo6349(プロフ) - こんばんは！完結おめでとうございます！ずっと私の中で物語を完結させたくなくて読めなかったのですが読めてよかったです。今回もとても素敵で好きなお話でした。本当にてなさんの書かれる物語が大好きです！忙しいので時間はかかるかもしれませんが新作も絶対読みます (2019年4月26日 22時) (レス) id: 66d3f8785b (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - 華さん» 嬉しい限りでございます…複雑な心境を書くのがすごく難しかったです。コメントありがとうございますー！！ (2019年3月29日 14時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - すごいです…。私、占ツクの小説で泣いたの、初めてです。夢主の悲しみとか嫉妬心とかが分かりやすくて、一気に読んでしまいました。完結おめでとうございます！！ (2019年3月28日 21時) (レス) id: 1c08efcab1 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - 蓮-Ren-さん» ありがとうございます！そう言っていただけると凄く嬉しいです…(´∇｀) (2019年3月27日 13時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：てな
| 作成日時：2019年3月21日 16時
