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『れ、さん……』
自分でも驚いていた。いくら場の空気に飲まれたからとはいえ、今までキスもしなかった彼女とそういう関係になるのは。
ーーいや、元から夫婦なんだが。
(……可愛かった)
彼女の容姿は元々整っているし、体つきも筋肉がついていて綺麗だ。
何かスポーツでもしてたのか?と聞けば「き、筋トレにハマってた時期があって…」と目を逸らしつつ答えられた。
ーー情事から数日が過ぎた現在。やっと一般的な夫婦という型にはまってきているのかもしれない。…が、最近妻の様子がおかしかった。
(…そういえば、聞き直すのを忘れてたな。帰ったら聞いてみるか)
確か徹夜気味で意識が朦朧としていた時にAが相談があると言っていたのだ。眠気やら疲労やらでその時は断ってしまったが、今思えば何か重要な相談だったのだろうか。
「ーーーーー…ン……バーボン!」
「っ、…ベルモット」
「さっきから話しかけても上の空じゃない。私の話を聞かず一体何を考えてたのかしら?」
強めに名前を呼ばれてはっとする。
助手席を見やれば、世界的大女優が不機嫌そうに紫煙をくゆらせていた。
…この女は僕が結婚していることを知らない。
いつ何時人質にとられるか分からないからだ。
「気にしないでください。最近寝不足でぼんやりしてしまうだけですから…」
「あらそう?その割には顔色が良さそうね。
寝不足は今に始まったことじゃないでしょう。
……それとも、何かいいことでもあったのかしら」
「…いいこと。多忙な僕にとって”いいこと”とは
少しでも組織の仕事が減って、十分な睡眠が
取れるようになることなんですがねぇ」
「悪く思わないで頂戴。ジンが面倒な仕事は貴方にやらせろって煩いのよ」
とんだパワハラである。訴えたい所だが後で何をされるか分からないので仕方なく口を噤んだ。
「ーーいい?貴方には例の裏切り者の始末をしてもらうわ。逃げ足の早い厄介なハッカーよ。迅速に捕まえて、相応の罰を与えること」
手でピストルのサインを示したベルモットが、僕の頭に人差し指を向ける。つまり見つけ次第殺せというわけか。
「それに……これは貴方にとっても得のある話でしょう?あの男のことだから、きっとあの動画はまだ消してないと思うわ」
「……」
「じゃ、あとはよろしくね。バーボン」
優雅に車を降りて立ち去っていった魔女を睨みつけ、やっぱり読めない女だとため息をついた。
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モミジ(プロフ) - この作品、最高です!この作品を読んで感動して泣きました。新作も読んで見ます!これからも応援しています! (2019年5月5日 16時) (レス) id: d4cb7d7d86 (このIDを非表示/違反報告)
ringo6349(プロフ) - こんばんは!完結おめでとうございます!ずっと私の中で物語を完結させたくなくて読めなかったのですが読めてよかったです。今回もとても素敵で好きなお話でした。本当にてなさんの書かれる物語が大好きです!忙しいので時間はかかるかもしれませんが新作も絶対読みます (2019年4月26日 22時) (レス) id: 66d3f8785b (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - 華さん» 嬉しい限りでございます…複雑な心境を書くのがすごく難しかったです。コメントありがとうございますー!! (2019年3月29日 14時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - すごいです…。私、占ツクの小説で泣いたの、初めてです。夢主の悲しみとか嫉妬心とかが分かりやすくて、一気に読んでしまいました。完結おめでとうございます!! (2019年3月28日 21時) (レス) id: 1c08efcab1 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - 蓮-Ren-さん» ありがとうございます!そう言っていただけると凄く嬉しいです…(´∇`) (2019年3月27日 13時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:てな | 作成日時:2019年3月21日 16時