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「彼女はある国家の特殊工作員だった。だけどそれを、絶対に君だけには知られないよう最期まで生き続けたんだ」




…Aからの返事はない。


あの男は組織の裏切り者として始末しろと言われていたが、公安として彼を死なせるわけにはいかない。風見を呼び身柄を運ばせた。

二人きりとなり、未だ不安定な様子のAをソファに座らせる。全てを話し終えても彼女は深い哀愁が見える瞳を伏せたままでいた。





「…初めて心の底から誰かを愛せるような気がした」





「………」

「『行ってらっしゃい』『ただいま』って笑顔を見せてくれる君を、いつの間にかどうしようもなく好きになっていたんだ」





…手を伸ばして、そして触れていいのか迷った。

けれど。行き場をなくした不安げな瞳がゆらゆらと揺れていて、頭を撫でようとした右手が自然と背中に回っていた。


結婚してもうすぐ一年が経とうとしているのに、おぼつかない仕草で彼女の柔い身体を恐る恐る抱き寄せる。




「……酷い人ね。どうして知ってたのに、私なんかと一緒にいたの」

「………」

「殺そうと思えばいつでも殺せた。今だってそう」




腕の中で彼女が震えた左手をゆっくりと僕の首に添えた。力を入れられれば少しの圧迫感があったけれど、到底息は止まらなそうになかった。

いくら女性といえど、無抵抗の男の首を締めることぐらいは出来る。







「私は貴方を殺したくて仕方がない。
…だけど、体がそれを拒絶するの」




淡々と告げてはいるが彼女の表情はずっと泣きそうだった。

…僕達は一緒にいるべきではなかったのだ。
彼女も僕も、呆気なく恋に落ちてしまった。








「殺したいぐらい嫌いだったのに、…いつの間にか
殺したいぐらい貴方を好きになっていた」

--紙一重--→←9



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モミジ(プロフ) - この作品、最高です!この作品を読んで感動して泣きました。新作も読んで見ます!これからも応援しています! (2019年5月5日 16時) (レス) id: d4cb7d7d86 (このIDを非表示/違反報告)
ringo6349(プロフ) - こんばんは!完結おめでとうございます!ずっと私の中で物語を完結させたくなくて読めなかったのですが読めてよかったです。今回もとても素敵で好きなお話でした。本当にてなさんの書かれる物語が大好きです!忙しいので時間はかかるかもしれませんが新作も絶対読みます (2019年4月26日 22時) (レス) id: 66d3f8785b (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - 華さん» 嬉しい限りでございます…複雑な心境を書くのがすごく難しかったです。コメントありがとうございますー!! (2019年3月29日 14時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - すごいです…。私、占ツクの小説で泣いたの、初めてです。夢主の悲しみとか嫉妬心とかが分かりやすくて、一気に読んでしまいました。完結おめでとうございます!! (2019年3月28日 21時) (レス) id: 1c08efcab1 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - 蓮-Ren-さん» ありがとうございます!そう言っていただけると凄く嬉しいです…(´∇`) (2019年3月27日 13時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:てな | 作成日時:2019年3月21日 16時

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