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you side


外は酷い雨だった。


まるで私の気持ちを代弁するよう…とは言い難い。
一番聞きたくなかった真実を目の当たりにした
今。不思議と心の中は空っぽだった。

何を考えるのも嫌になったのだ。






「……やっぱり、悪いことは出来ないわね」




悪事を働いた分いつか罰が帰ってくる。
そんなこと、義賊気取りの自分が
一番分かっていたはずなのに。


静かすぎる部屋は耳鳴りが煩くて
傘もささずに外へ出た。







(……太陽が、見えない)





こんなどしゃ降りの中公園で遊ぶ
子供はいないだろう。雨の音だけが響く
誰もいない公園で、一人濡れたベンチに腰掛けた。


空を見上げても灰色の空が広がっているだけだった。





『お日様は皆へ平等に光を与えてくれるのよ』

『そうなの?』

『だから、Aもそんな人になってほしいな』




「"そんな人"……」




私だって望むことならそうなりたかった。

母と一緒に普通の日常を過ごして、学校にも行って
普通の友達を作って、普通に生きていく。




(何もかも、嫌になる)





「………」




楽になりたい。

バッグに入れてある拳銃を取り出し
暫くそれをぼうっと眺めていた。
…一瞬でこの苦しみから開放されるのだ。




(…もう、終わりにしたい)





また失った。大切なものは全部奪われて
残ったのは手に余るほどの罪ばかり。
心臓が止まりさえすれば、全て無かったことになる。



銃口をこめかみに当てつけ引き金に人差し指を置く。
不思議と死への恐怖心はなくて、
涙すら一滴も流れることはなかった。


泣いていたとしても、雨でろくに分かりもしないが。





頬に貼り付く濡れた髪をそのままに
ゆっくりと目を瞑る。








『君は何をそんなに、』





初めて誰かに気付かれた。

必死に偽物の笑顔で隠していた、
どうしようもない不安と恐怖心。







「………、…」





分かっていた。自分が怖がりなことも
引き金を引く勇気がないことも。




ーーーーーーー……けれど、唯一計算外だったのは、









.









「……っ、…はぁ、……は、」






びしょびしょに濡れた"彼"が

息を切らして、この場に現れることだった。








.

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てな(プロフ) - 華花。さん» 嬉しみ深いお言葉感謝です…!!ふりゃさんの複雑な心境をなんとか表現していきたいです(願望) (2019年2月15日 22時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - 御影さん» ああありがとうございます…ようやく旅行から帰れたので更新進めて行きたいと思っております! (2019年2月15日 22時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
華花。(プロフ) - てなさんの作品大好きすぎてもうてなさん無しでは生きられない体になってしまってます(キモい)これから2人がどうなっていくのか…楽しみにしています! (2019年2月11日 23時) (レス) id: 2bd2296ed7 (このIDを非表示/違反報告)
御影(プロフ) - な、泣ける……。゜(´∩ω∩`)゜。先が気になるがとりあえず今日は寝ます。 (2019年2月10日 22時) (レス) id: 0f64e64eef (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - シャラさん» コメント誠にありがとうございます!過去の作品まで見てもらえて感謝感激でこざいます…(*゚▽゚)かっこよい零くんを書くのが至福です!更新まったり頑張らせていただきます!! (2019年2月4日 0時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:てな | 作成日時:2019年2月1日 22時

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