【名探偵コナン】安室透って誰ですか？【降谷零】

ちょっとだけ頬を赤くした彼 ページ11

…

Furuya side




「ーーーいらっしゃいませ」



からん、と音を鳴らしたのは先日よりも
穏やかな眼差しで店内を見渡す彼女だった。

俺を綺麗な瞳に入れると、
何度か瞬きをしてから歩み寄ってきた。






「あの、安室透って誰ですか？」



「………はい？」






こちらにいると思うんですが、と
小首を傾げたAさんが
緩やかに口角を持ち上げる。





「……僕、ですけど」

「ああやっぱり」





分かってましたと言わんばかりに
喜色を見せたAさんが
「会いたかったです」と俺を見上げる。




(…………一体、なにが……)




なんというか、今日のAさんには棘がない。

というか。





(……可愛い？)





なんというか俺を見る目が優しいのだ。
まるで、幼い頃の初恋の人が見せた
あの柔らかな眼差しのようで。





「宮野エレーナ」




そう、彼女の表情だ。





「…………は？」

「組織にいる貴方ならご存知かと」

「……」





組織、とも確かに彼女は口にした。

驚愕しながら目を瞬かせれば、Aさんは
「昨日の私や…貴方のことは
江戸川コナンくんから聞きました」と笑った。





「大変失礼な態度をとったようで」

「………ええ、まあ」

「でもお互い様ですよね？貴方だって余程の
胡散臭い笑顔を私に向けたみたいですし」

「……」






優しい、と思えば思わぬ暴言を吐かれた。
でも心無しか呆れるような物言いは
やはり先生に似ている。





「貴方と二人きりで
お話がしたいんです、…安室透さん」

「…」

「あ、何故昨日の私が
貴方の名前を知っていたか…知りたいですか？」

「それは、ぜひ」




無言で頷いた俺にAさんは
可愛らしく上目で振り返ってきた。


……と、思えば履いていたスカートを
思い切りたくしあげて、真っ白な太腿を
指さそうとした彼女を慌てて止めた。





「ここは喫茶店ですよ！？」

「見てください。貴方の名前です」

「………これ、は」





『安室透 正体』と彼女の筆跡で書かれたソレで
ようやく昨日のAさんが起こした
不可解な行動の原理に納得がいった。

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