【名探偵コナン】安室透って誰ですか？【降谷零】

昨日の私と今日の私と彼 ページ2

…

Furuya side



「また貴方ですか…」

「はじめまして。探偵の九条Aと…」

「名刺はもう頂きましたので結構です」



呆れた顔の目暮警部に
彼女はキョトンと目を瞬かせたが、

「あら、そうでしたか」と
名刺を鞄に戻し、踵を返して
黒髪の女性山下唯の元へ足を進めた。




(相変わらず速いな……)




事件から数十分経ち、もう
犯行トリックの把握が多方出来ているようだ。




「Aさん、犯人分かったんですか？」

「………まあ」

「凄いじゃないですか」




Aさんは容疑者である三人に
個別でいくつかの質問をし、
最後にトイレの中を物色してから
ポアロの店内を見渡してそう俺に答えた。




「………貴方」

「？」




俺の手首を掴んでいまだ捜査を続ける現場から
少し離れた、店内の隅の方へ連れていかれた。





「"今日のAさん"、"昨日のAさん…"

なんて先程言っていましたが、アレは
もしかして毎日日替わりで私の態度や性格が
変わっているという意味ですか？」


「………はあ、」







「…………今日の私は、変ですか？」





思わず気の抜けた返事をしてしまった。

途端、余りにも彼女の目が伏せられ
不安そうな表情に変わってしまう。



お陰で彼女に言うべき言葉が見つかった。



「答えてください」と可愛らしく睨んできた
Aさんにうーん…と悩んでみせる。






「貴方は僕達のように過去の経験則から己の反省、更生、学習が出来ない…つまりその日の気分云々
ではなく毎日貴方は違う見解を持つんです」


「……」


「けれど僕にとって貴方は、何も変わらない。
つれなくて、生意気で素敵な女性なんです」




貴方がいくら僕を忘れようが
僕とした会話はなかったことにされてない。
僕が貴方を忘れない限り、永遠に。



そう口にすると、Aさんは
伏せられていた睫毛を上げて
色素の薄いブラウンの瞳に俺を捉えた。



ーーーこれは数ある顔を持つ俺が、
降谷零として彼女に言える言葉だ。

彼女がどれだけ忘れようが、俺が覚えている。





「だから、今日の貴方も…いつもと同じ
最速で犯人を突き止める推理好きな探偵

………九条Aさんですよ」






.






「………おな、じ」

「はい」





ーーーそう呟いた彼女は、俺を見上げて

呆然と立ち尽くしていた。

毎日生まれ変わる私と饒舌な彼は私→←あらすじのようなもの

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す