【名探偵コナン】はじめまして【降谷零】 (ページ26)

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自称数年前からの知人沖矢昴と彼女ページ26

…

「こんにちは」

慌ただしく走っていく有希子さんの背中を
ぼんやり見ていれば、背後から唐突に
低くそれでいて柔らかな声が飛んできた。

「………私ですか？」

「ええ…その様子だと僕のことも
忘れてしまっているようですね」

残念です、と苦笑しながら
私の顔を見下ろす男は
随分と長身でスタイルもいい。

服に隠れてはいるが
それなりに鍛えられているようだ。

「あの、お名前は」

「沖矢昴といいます」

沖矢昴、全く存じ上げない。

そんな私の思考を汲み取った沖矢さんは
小さく笑いながら口を開く。

「貴方とは数年前からの知人で、
…今日は何故ここに？」

「……今日は服を買いに来ました」

ホォー…なるほど。

と相槌を打つ彼にやはり違和感が湧く。
まるで別人の皮を被った人間のような気がして。

「………貴方は、僕に会う度に
いつもその顔をする」

「……え？」

「まるで僕が別人の皮を被った人間のようだと、
そう疑っているような顔です」

初対面の男はじりじりと詰め寄ってきながら
糸目に細められていた目を片方だけ開けた。

緑色の瞳は恐らくカラーコンタクトではない。

「……もう、いいですか。貴方にとって私は
数年前からの知人なのかもしれませんが
今日の私にとっては赤の他人です」

「おや、つれませんね」

くすり、と余裕綽々と笑う沖矢さんを
じっと見上げていれば、これまた唐突に
「あーっ！！見つけましたよ！」と
声変わり前の少年特有の声が聞こえてきた。

「ひでーぞ昴の兄ちゃん！！
勝手にどっか行っちまうなんてよ！」

「歩美たち一生懸命探したんだからね！」

バタバタと駆け寄ってきた少年少女三人組に、
沖矢さんは先程醸し出していた
ミステリアスな雰囲気を消して

「すみません、知人がいたもので」と
柔らかく微笑みながら謝っていた。

「……知人になった覚えはありません」

「今日は一段と冷たいですね」

当然だ。初めて会った怪しい男に
突然知人と言われても、正直疑心ムンムンである。