安室透が気になる彼女 ページ22
…
you side
「……では、失礼します」
手に取った彼のゴツゴツした
大きな手を元に戻して、柔らかく微笑んでから
一礼しくるりと方向転換した。
何故かぽけーとした顔をしていたが、
何かまずい事でも言っただろうか。
(どうせ、明日になれば忘れてしまう)
そう、きっと忘れてしまう。
内心で溜息をつきながらそんな呟きを零して、
先程彼に言われた言葉をぼんやりと復唱した。
「なかったことには、されない…」
ういん、と開いた自動ドアに感嘆しつつ
街灯の眩しさに目を細めた。
私の記憶から彼も彼との会話も
全て抜け落ちてしまっている。
けれど、彼と交わした言葉は
彼が覚えている限り永遠と残る。
私の脳から消えたところで、
体はちゃんと覚えているはずなのだ。
「……おかしな人」
安室透、だった気がする。名前。
「また会えるかな」
ほんの少しだけ、初めて会った彼に
そんなことを思っていた。
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Conan side
「ーーーコナンくん」
自分が考えていた推理を端から端まで
全て言われてしまい、無事事件は解決された。
やっと帰れるぜ…と一息ついたところで
側にいた沖矢昴こと赤井さんが俺に耳打つ。
「なに?昴さん」
「彼女は…」
昴さんが普段開くことの無い目を向けたのは、
何やら安室さんと話し込んでいる様子の
リセット探偵こと九条Aさんだった。
「探偵だよ。しかも
記憶が一日でリセットされる…」
「………ホォー…」
僕も何回か会ったことあるんだけど、
Aさんには忘れられてるみたい。
そうコソコソ昴さんに囁くと
彼が小さく何かを呟いた。
「………見つけた」
目の先にいるAさんを捉えるその瞳は、
何処か悲しげでゆらゆらと揺れていた。
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作者名:てな | 作成日時:2018年8月12日 17時