検索窓
今日:12 hit、昨日:13 hit、合計:203,789 hit

安室透が気になる彼女 ページ22



you side



「……では、失礼します」



手に取った彼のゴツゴツした
大きな手を元に戻して、柔らかく微笑んでから
一礼しくるりと方向転換した。

何故かぽけーとした顔をしていたが、
何かまずい事でも言っただろうか。




(どうせ、明日になれば忘れてしまう)




そう、きっと忘れてしまう。

内心で溜息をつきながらそんな呟きを零して、
先程彼に言われた言葉をぼんやりと復唱した。




「なかったことには、されない…」




ういん、と開いた自動ドアに感嘆しつつ
街灯の眩しさに目を細めた。



私の記憶から彼も彼との会話も
全て抜け落ちてしまっている。

けれど、彼と交わした言葉は
彼が覚えている限り永遠と残る。

私の脳から消えたところで、
体はちゃんと覚えているはずなのだ。




「……おかしな人」




安室透、だった気がする。名前。



「また会えるかな」



ほんの少しだけ、初めて会った彼に
そんなことを思っていた。





......................................................


Conan side



「ーーーコナンくん」



自分が考えていた推理を端から端まで
全て言われてしまい、無事事件は解決された。

やっと帰れるぜ…と一息ついたところで
側にいた沖矢昴こと赤井さんが俺に耳打つ。



「なに?昴さん」

「彼女は…」



昴さんが普段開くことの無い目を向けたのは、
何やら安室さんと話し込んでいる様子の
リセット探偵こと九条Aさんだった。




「探偵だよ。しかも
記憶が一日でリセットされる…」

「………ホォー…」




僕も何回か会ったことあるんだけど、
Aさんには忘れられてるみたい。

そうコソコソ昴さんに囁くと
彼が小さく何かを呟いた。







「………見つけた」






目の先にいるAさんを捉えるその瞳は、
何処か悲しげでゆらゆらと揺れていた。

謎の女性と寒がりな彼女→←忘却される会話と言葉を紡ぐ彼女



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (137 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
314人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:てな | 作成日時:2018年8月12日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。