ベルモットと沖矢昴と彼女 ページ17
…
死亡推定時刻は午後4時半から5時半。
その間長時間姿が確認されていないのは
レコード会社社長の布施憶康さんと
波土さんのマネージャー円城佳苗さんのみ。
布施さんはスタッフのジャンパーを買いここへ
潜り込んできた雑誌の記者である梶谷宏和さんも
容疑者の一人ではないかと主張している。
「波土が殺されたんだろ!?
写真くらい撮らせろよ!!」
さっきから羽交い締めにされて暴れてる彼は、
以前からしつこく波土さんを取材していたらしい。
(……不躾な人ね)
人が死んだというのに、
何故心無い発言を平気で叫んでいられるのか。
全く不思議でしょうがない。
「円城さん」
「は、はい?」
「貴方は野球をしていましたか?」
彼は恐らく白である。
彼が潜り込んできた時間帯からして
犯行は不可能だろう。
観客席の後ろの方に転がっていた野球ボールは
ステージとだいぶ距離が空いていた。
「いえ…テニスならやってましたけど」
「そうですか。ありがとうございます」
狼狽えた様子の彼女に笑いかけて
もう一度現場に赴く。同じ質問をしている
小さな男の子が少し気になったものの
さっさと押収されてしまいそうな
パイプ椅子をもう一度見るためその場を後にした。
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Furuya side
「ねぇちょっと、誰なのアレ」
「はい?」
あの女、と梓さんに扮したベルモットが
怪訝そうな顔で観客席からステージを
じっと見つめるAさんを指差す。
勿論彼女はコチラに背を向けていて
気付く様子はない。
「探偵です、少し特殊な」
「あら…同業者?」
「ええ。とても勘のいい探偵なんですよ」
そう、彼女は優秀な探偵だ。
………沖矢昴は彼女が現場に現れた時、
ほんの僅かな動揺を見せた。
(……ただの興味か?それとも…)
今も彼は推理をしている彼女を
射抜くような視線で見ている。
それは決して、物珍しさからのものではなかった。
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作者名:てな | 作成日時:2018年8月12日 17時