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忘れられた自分と紅茶を飲む彼女 ページ13






「ーーーいらっしゃいま…」




とうに聞き慣れた鈴の音を聞き流して
新しく来店されたお客様を迎えに
抱えてたお盆をテーブルに置く。

途切れたいらっしゃいませに
当然学校帰りに寄っていたコナンくんと
女子高生3人組は首を傾げて俺を見た。




「………あの」


「あ、えっと」




先日の事件から2日が経った今日。

いつもは朝に来ることが多かったのに、
今日は日が暮れたこの時間にやってきたのか。


Aさんからしてみれば
初来店の喫茶店の初対面の店員に
まじまじと顔を見られているのだ。

彼女の顔は先日よりも少し怪訝そうである。



「僕は安室透です。前に
貴方と会ったことがあって、つい」

「……そうだったんですね」



やはり俺のことは綺麗さっぱり忘れられている。
名前を出してみても目立った反応はなし。
どうやら日記の類も付けてなさそうだ。




「貴方と私は、どんな関係で?」




Aさんがカウンター席の一番右端に座りながら
首を傾げて俺に聞いてきたので、彼女に言われた
上っ面の笑顔にならないよう心がけながら

「僕も探偵をしていて、
同じ事件を推理してたんです」と笑みを浮かべた。




「それ、僕もいたんだよ」

「……この子と、あとはあちらの
テーブル席座っている方達もいました」




とてとてとAさんに歩み寄り
ニッコリと笑ったコナンくんは、
同じ探偵としてか非常に彼女に興味があるようだ。

小さな名探偵だが。




「ほんとに忘れちゃってるんだ…あ、
あたし!園子って言います〜!」

「もう園子!……毛利蘭です。
先日はお世話になりました」




調子よく笑った園子さんと蘭さんに、
Aさんは戸惑いながらも軽く
「どうも、」と会釈をする。

世良さんは「僕のことも忘れちゃったのか〜」と
残念そうに笑っていた。






「……おいしい」


「…」





恐らく先日は先日。昨日は昨日。
そう割り切って生きているのだろう。

特に彼女達にその時の話を詳しく聞こうとはせず
目の前に置かれたアップルティーを
一口だけこくんと飲み込んで

Aさんが小さく、そう呟いた。






「……ならよかったです」





依然の自分を知るよりも、目の前にある
一杯の紅茶を飲む事を優先する彼女。


そんな彼女に、ただそう言って
笑ってやることしか出来なかった。

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作者名:てな | 作成日時:2018年8月12日 17時

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