【名探偵コナン】プリンスはマドンナが好き【降谷零】

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…


「………、」


「……」



映画の内容は言わずもがな
純愛ラブストーリーなんて物ではなく

彼女自身が本来好きな、
推理小説を実写化したものだった。


勿論残虐な事件が多々起こるが、
彼女は平気な顔をしてスクリーンを見ていた。

ヒロと文化祭のお化け屋敷に入った時なんか
「きゃっ、怖い…景光くん…」と
こことぞばかりにヒロにくっついていたくせに。



(……結構えぐいな…)



本業が故に妙に赤すぎる血に
違和感を覚えながらも、
思っていたよりもそういった描写が多かった。


だがしかし、先程も言った通り
Aは怯えた声一つ出さず
俺の隣で他の観客が肩を揺らす中
じっとスクリーンを食い入るように見つめていた。

俺の前だけではこうやって
素を出してくれている事に嬉しさを感じながらも、
反面可愛らしい反応を
見せてくれないことに残念さを感じていた。




(………何してたって可愛いけどな)




顎に手をやり犯人を
一生懸命に登場人物と共に推理する姿は
とてつもなく可愛いし、

何より真犯人が明かされた時も
推理が当たっていたのか小さく「ふん、」と
得意げに笑っている姿なんてもう
思わず咳き込んでしまった。あまりの尊さに。



「………、…」



うるせぇんだよ、という容赦ない隣からの視線を
軽く流しながらエンディングを耳に入れていた。




......................................................


you side



「あんた、黙って映画くらい見れないの」


「咳ぐらい許せよ」


「視線がうるさかった」



う゛、と言葉を詰まらせた降谷は
「……悪かった」とバツが悪そうに
目を逸らしながら素直に謝罪してきた。


というかまず、そんな降谷を見ては
きゃっきゃっと頬を染めて
通り過ぎていく女達がうるさい。

そして私を見てはニヤニヤと
汚ぇスマイルで通り過ぎていく男達もうるさい。




「っ、…バカ降谷！」


「は？」



ふん、と踵を返して歩き始めた私を見て
降谷は「……？、」と小さく首を傾げていた。

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