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…
今まで怖かったの一点張りで、
景光くんの実家を訪れることを
何度も躊躇していたままだった。
けれど、勇気を出して
インターホンを押してみたのだ。
(………ここで、景光くんが出てくれたら)
ドアが開き私の顔を見ては
悲しそうに顔を歪めた景光の母親を
この眼に入れた瞬間。
(………、…本当に、いなくなったんだね)
あまりにも実感出来なくて、
他人事のようにそんなことを思っていた。
......................................................
「………、…」
とぼとぼと大通りを歩いていれば
きゃあきゃあと騒ぎながら
走り去っていく学生達が見えた。
やるせない気持ちが募り、人通りのない
薄暗い路地裏に入れば、喧騒はピタリと止んだ。
___景光くんの母によれば、
景光くんが亡くなったと聞いたのは
やはり私と連絡が取れなくなった数年前で。
降谷と同じ潜入先で殉職をしたそうだ。
「……ねえ、景光くん」
写真の中の彼に話しかけても、返答はない。
その隣で笑う私の顔は
誰がどう見たって『幸せです』と
断言している風な表情だった。
「………大好きだよ、」
遅すぎた告白を、返事のない告白を写真に零した。
ぼろぼろと落ちる涙は
ここ数十年で久しぶりに見たもので、
いくら拭っても止まらなかった。
涙って、どうやって止めるんだっけ。
(………、あぁ、……そうか)
『泣くなよ、……A!』
景光くんがいつも
笑いながら涙を拭ってくれるからだった。
「……っ、……止まんない、…」
自分の呟きは馬鹿みたいに震えていて、
汚い嗚咽まで混ざっていた。
こんな仕事をしているからだけど、
昨日まで隣にいた同僚が
明日には姿を消していたことなんて、
度々あったのに。
数年前に笑っていた彼が
いつの間にか死んでいたなんて、
実感が湧くわけないじゃないか。
「ひ、…景光くん…、っ景光、くん……」
___足元にぽたぽたと落ちる水滴が、
突然ぴたりと止まった。
いや、正確には
流れる涙を優しくハンカチで拭われた。
「…あ、……の……」
見上げれば、宝石のような緑色の瞳が
私を静かに捉えていた。
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てな(プロフ) - あるさん» 返信大変遅くなりすびばせん!!!!!某ヒロア…からお借りしました(小声)大変嬉しい限りです!ありがとうございます〜(゜▽゜) (2019年1月19日 1時) (レス) id: 148a377828 (このIDを非表示/違反報告)
ある(プロフ) - 今絶賛読んでいる途中なのですが、とぉっっっっっても面白いです!!!ピザーラ銀座店です。の所、どこかのヒーローアニメと似てたような…あとそれの敵の反応も…あ!勘違いですね!はい← てな訳ですんごい面白いです!以上! (2018年11月17日 17時) (レス) id: 24dd2edea5 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - 輪廻さん» ひぇー!キュンキュンしていただき感謝でございます…(´∇`)コメントありがとうございます!! (2018年8月11日 14時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
輪廻(プロフ) - 完結おめでとうございます!この作品ほんっとに好きで、完結したのが嬉しいやら寂しいやらで最終話読み終えた瞬間1から読み直しました笑何度読んでもめちゃくちゃキュンキュンしました!お疲れ様です!これからも応援してます! (2018年8月9日 21時) (レス) id: d5ec128220 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - Ha_3さん» 番外編なんとか入れたかった…最後くらいデレさせたいと頑張ってみましたw最後まで読んでいただきありがとうございます! (2018年8月9日 0時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:てな | 作成日時:2018年7月29日 12時