騙されないから! ページ10
「疲れたぁ〜!」
「お疲れAちゃ〜ん、今日も助かったよ」
「ぶぇっ、いや、お易い御用です!」
「じゃあ明日も頼んでいい?」
爽やかスマイルに騙されて勿論!と答えそうになったが、いや、勿論じゃないって。このまま流されてったらズルズルやらされちゃう。
No!と胸の前で大きなバッテンを作って断ると、唇を尖らせてケチ!と言い返してくる。幼稚園児ですか貴方は。
「真剣にお願いなんだけどさ、火曜日までは続けて貰えないかな」
「え?」
「練習試合決まったんだ、今度の火曜日。1年生にも試合たくさん見せてやりたい。でも向こう1人で色々仕事するには大変かなって、Aちゃんは仕事ちゃんとやってくれるし…」
あのね、と少し困ったように及川君は笑う。
「最初俺のせいでマネージャーいないって岩ちゃん言ってたでしょ?見ての通り及川さんってモテモテだし…マネージャー志望の子は沢山来るんだけどね。真面目にやってくれる子ってあんまりいなくて」
「そういえば…言ってたね」
「こうなってるの、俺のせいだから。みんなに迷惑かけたくないんだ…ごめんね?だからってAちゃんに無理ばっかり言っちゃって。嫌なら断っ「ちょっと待って!!」
いきなり叫びだした私に、及川君はただでさえ大きな目を見開く。
「及川君は悪くないよ!その…たしかに及川君はカッコイイしっ、私も何回も心臓がギュッてなったり…したけど!悪いのは女の子たちの方だよ」
「えっ?Aちゃんそれほんと?」
「私やる!火曜日までやる!いっぱい仕事覚えて、みんなの役に立つから!自分のこと悪いって思わないで」
「Aちゃん…」
「岩泉君も本当に及川君のこと責めてないと思う…というか、みんな及川君が悪いなんて思ってないし」
俯いたまま喋らない及川君が心配で。みんながあそこまで私をマネージャーに誘ってたのはそういうことなのかって分かったら、ただ自分の都合だけで断るなんて出来なくて。
「ほっっとお人好しだよね〜!!俺ちょっと心配かも」
「…え???????」
ケロッとした顔で舌を出す及川君に私の思考は追いつかない。なんで?さっきまであんなに申し訳ない顔してたよね?なんで今ヘラヘラ笑ってるの?
「仮にも俺達結構強豪なんだよ?そういうのはちゃんと二軍達に任せられるし…騙されちゃったね?」
「っ…はあ!?!」
俺にときめいてたって話聞かせて〜と笑いかけてくる及川君に、ふつふつと殺意が湧き出たのは秘密です。
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作者名:さばぬき | 作成日時:2023年3月9日 15時