ペットシッター (ページ3)

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その日は、多分大学の後友達と遊んで帰ってきたときのことだった。

家の鍵を探していた時

「ちょっと待って！」

の声にびっくりしてその方を見ると

ワンちゃんが元気よく走ってきていた。

私は反射的に犬を抱っこした。

すると抱きしめられた犬は嬉しそうに

私の顔をペロペロと舐めた。

『すみませーん、助かりましたぁ』

「あ、いえ。」

後からやってくる飼い主さんにワンちゃんを

返そうとした時、私の心臓は止まった。

飼い主が私が大好きなアーティストだったから。

彼は、ん？っという顔をしてあ、ばれてもうたか

と思いさっさと退散しようとした。

ただ一度彼の手に渡ったワンちゃんは

もう一度彼の腕から飛び出し

私の足元へやってきた。

彼は、困ったようにして

『ほらぁ、お姉さんの邪魔になるから…。

散歩行くで～？』

それでも離れないワンちゃんに対して

そのやり取りは10分くらい続いた。

終わらないと確信した私は

「あの…私が散歩に行きましょうか？」

そう言った。

彼は思いがけない言葉にびっくりして

それから少し気まずそうな顔をした。

それは多分私がファンだってことに気づいてたからもしれない。

それを避けるように彼は

『え、でもそれも悪いし～。』

と言った。

「でも、このままじゃワンちゃんが帰りそうにないですよ？」

かれの弱みを見つけたように私がいうと

それもそうだと彼は苦笑いして

『じゃあ、一緒に』

そう言った。

それが彼と私との出会いだった。