振返 ページ36
〜red side〜
じっとしたくなくてAのところまで来てしまった。
Aは、まだ帰ってきてなかった。
そして1時間後車の音がして顔を上げるとAがダッシュで駆け寄ってきた。
それだけで、もう泣きそうになった。
「A…。」
Aは何があったかわかってるんか心配そうな顔をしてる。
『あほ、心配したやん。
家行ったのにおらんし。』
「…ごめん。」
『うん…と、りあえず、入ろ?』
「…A。」
鍵を開けるAの肩がビクッとする。
『…な、に?』
「なぁ、去年のライブDVD見せてくれへんか。」
俺がそう言うと少し迷ったような顔をしてそれから頷いた。
それからDVDが始まるとどこかへ行ってしまった。
そしてしばらくして帰ってきたと思ったらご飯がのってあった。
「…疲れた〜、何も食べれてないねん。
すばるも、お腹、すいたやろ?』
そう言ってニコって笑うけど全然箸も進んでないし
さっきから立ったり座ったり落ち着きがない。
おまけに今やって皿にお茶を注ごうとしてて
俺は思わず止める。
「お前さ、別に居たくないんやったら違う部屋おってもええから。
もう大人やし、俺1人でも見れるし」
そう言うとAはギクッとした顔をした後
『…ごめん。じっとします。』
そう言ってAは俺の隣に三角座りした。
それからはテレビに集中した。
テレビに集中すればするほど目を背けたくなるような現実。
俺がおった間、おらんなった間ほんまに無理してたのがわかった。
そしてその全てを見終わった時さらに罪悪感が多くなった。
DVDが終わってテレビを消し、無音が流れた。
『…すばる?』
鼻声と涙が霞んだ声のAが俺の名前を呼ぶ。
「…ん」
『あの、さ?みんなに電話してみいひん?』
「…無理や、こんな思いさせて…」
『すばるの言いたいこともわかる。
でもさ、やっぱりこのままやともったいないよ。
この15年間気づいてきた絆を全て壊して残るものはほんまに罪悪感だけ?
ちゃんと、考えて。
ほんまにこのままでええの?
たぶん、この機会逃したらもう一生、かけられへんと思う。」
それから俺はしばらく考えた。
蘇ってくるあいつらとの思い出。
別れは本当に苦しかった。今までは本当に楽しかった。
俺は、
やっぱりわがままで
こんなことがあってもあいつらと繋がってたいと思った。
「電話、貸してくれる?」
『あたりまえやん。』
そう言ってAは俺に電話機を渡した。
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作者名:kameco | 作成日時:2019年8月2日 0時