距離の詰め方1 ページ2
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ある音楽番組の事前収録を終え、それぞれが事務所に帰る準備を着々と進めている中
私も私でたくさんの仕事を締めに、うろちょろ歩き回っていた。
メイクさん達はたくさんのメイク道具を片付け、衣装さん達は服を畳んで収納し、またそれを外に運び出している。
そうやってたくさんの人が忙しなく動いている中、
1人、誰かさんは楽屋のソファで爆睡中。
「アサヒさん、起きて下さい」
一人だけに時間を使う余裕もさほど無いが、このままだと取り残されてしまう。
しかし、アサヒさんは起きない
「アサヒさん、アサヒさん!」
as「…ん、なに」
「起きて下さい、バンに乗り遅れますよ」
肩を揺らしてやっと起きたアサヒさんは、周りを見渡すと「まだええやろ」と言ってまた目を閉じようとした
「駄目です。絶対目、閉じないでください」
as「んな…寝かせてや」
「ならバンに先に乗ってから寝たらどうです?」
as「嫌だ、ここがいい」
「嫌だ?駄々こねるんですか…」
長い足をソファに十分に伸ばして、両手を頭の後ろに回したアサヒさん。
私を見る目は今にも閉じそう。
そのまま取り残してしまおうか、と思ってしまったのも束の間
次にアサヒさんが口を開いた
as「ヌナが敬語やめてくれるなら、寝ないけど」
「…何ですか急に」
as「そのまんまやん、タメで話して」
「嫌です」
as「なら俺寝るけど…?」
「それは駄目です」
as「なら敬語やめてや」
まただ
最近の彼らはこうやって怖いと思うほどに、急に変な距離の詰め方をしてくる。
しかも、私側が不利な時に、やむを得ないという状況になる時に…
今もまさに、すぐやりたい仕事が残っている。
時間がどんどん過ぎていくのと、どんどん少なくなる人
「分かりました、敬語やめます」
as「意外。あっさり受け入れるやん」
「けど!けどですよ。」
as「ん?」
「明日からです…!良いですか」
as「ええよ別に笑」
as「ヌナに心の準備が必要なら」
「な、心の準備…とかじゃないですけど!?」
明日からという条件をつけて、やっとのことでソファから起き上がり楽屋から去って行ったアサヒさん
ここまで年下に舐められた態度を取られると、どことなく悔しい気もする。
しかし私も大人
公私はきちんと区別するのが最もだ
今回のは"やむを得ない"状況だったから
そうだ
仕方がないのだ。
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作者名:Biglove | 作成日時:2023年8月22日 23時