#25. 夢 ページ26
「ゴホッゴホッ!…はぁ、はぁ。」
目の前に並ぶカメラと、熱く眩しい照明
無駄に顔が熱く怠くて、何で立っていられるのか分からない程の熱を引いていた気がする
『園川 A。総合得点 250.87 1位。』
聞こえる歓声も、聞こえる拍手も、全部響いてエコーのように聞こえる
立ち上がった瞬間目の前がボヤけて、足が真面に立てなくなって
そうだ、この後私。倒れて──────
さん、……さん。Aさん!
パッと目を開けると、目上に池照さんがいた
起きていた時はまだ朝だったのに、もう夕暮れ時…
「……池照さん。どうしてここに。」
池照)目覚めましたか。出木田さんに聞いて来たんだよ。インターホンは鳴らしたんだけど、もしかしたらと思って。
裏道さんの楽屋に入る時と同じ
けど、心配して来てくれたんだ。色々買ってきてくれたのか、袋に詰まってる……
頭がボーッとする。天井がボヤけて見える
力が出ない。池照さんが居てくれるから、安心しちゃっているんだろうな、私。
「…もう、帰るの?池照さん。」
自分でも今何を言っているのか分からない
伝染ったら悪いから帰った方がいいと言うのが当たり前なのかもしれない
池照)帰りませんよ。Aさんの風邪が治るまではね。
優しく微笑むものだから、じっと見つめてしまう
池照さんの顔だけ、しっかりと見えるから
池照)何か怖い夢でも見ました?俺も、熱を拗らせた日は夢を見るから
夢……あぁ、そっか。さっき見たのは、夢だったんだ
「…昔の夢。熱が出ても、大会に出場して優勝した時のこと」
池照)それは……辛かったですね
「……。池照さん、敬語混じってる。」
池照)っえ。そ、そうかな。けどどちらかと言えば、敬語ばかり使うから慣れ親しんじゃって。
「なら、池照さんの使いやすい言葉遣いでいいよ。私、敬語使う池照さんも好きだから」
池照)えっ、
「え?」
……あれ、私今何と?
「っや、その。普段の池照さんがいいって話で。そんな、深い意味とかじゃ」
池照)違うんですか?
「…っ、違くないかもしれないけど、」
池照)ふふっ。そう言って貰えて嬉しいです
少し頬を赤く染めて笑う池照さんにドキッとした
以前も何度か胸が鳴ったりして、こうして隣に居るだけで安心してしまう
もしかして私……池照さんのこと
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作者名:ひな林 | 作成日時:2021年6月5日 8時