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#16. 過去 ページ17

私がここにくる9年前。
当時18歳。体大1年生の最初に、フィギュアスケートの強化選手として指定された


シニア大会最高記録を通り越して1位。
国内競技1位。全国高等スケート大会 1位。


沢山の記録と功績、沢山の技術や才能を磨いてきた私には、フィギュアスケートしか無かった




全ては、元フィギュアスケート選手で亡くなった母の代わりとして

悲しむ父を少しでも喜ばせて、認めてもらいたいという子供の頃に気にしていた大人の顔色



認められたい一心で、沢山氷の上を滑って飛んできた。

けどそれは、いつの間にか父の為じゃなくて、周囲の目や期待の為になっていた



メディアやマスコミに目をつけられた瞬間、期待を舞増とさせる

気づけば、日本の国旗を背負う選手で「エース」という完璧主義者にならなければいけない立場に置かれていた



父の為じゃない。観客の為に



本当にスケートが大好きだった。愛していた。
そう思わせてくれた観客の為に滑ろう


あの日。怪我をしなければ、私は今でも氷の上を滑り続けていた



グランプリファイナル


世界から選手が集まり、トップを争う大きな大会

マスコミは私の名前を売り上げ、誰もが『園川A』の優勝だと信じていた



足が氷に着地すると思ったその時、右足首を粉砕されたかのような瞬の激痛に、リンクに倒れた


立ち上がれるわけも無い。痛くて、目の前がモノクロにぼやけて、聞こえる音が曇りエコーがかかる



その途端、期待から外される空気に置いていかれた





前下脛腓靭帯


スケーターなら起こりうる怪我の一種で、リハビリをすれば戻れるんだと内心安心仕切っていた


けど、期待や信頼は二度と戻らないものになってしまった



『園川A選手。怪我復帰困難か?』


『スケート人生に終幕か?』


『園川A選手。現役引退?』



沢山のデマとフェイクニュースが飛び掛る
マスコミの一言が、たくさんの信頼と期待を裏切ってしまう



見離される


そう思った時には、父の姿は消えていた


1度も褒めてくれなかった、認めてくれなかった父は、何も言わずに消えていた




いつの間にか、孤独になっていたことを知ってしまった

#17. 見離されないこと→←#15. モノクロの世界



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作者名:ひな林 | 作成日時:2021年6月5日 8時

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