終着点は君の隣。1『蛇賀池照』 (ページ15)

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#14. 彼女の願いを叶えるのはページ15

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彼女に対して動揺するこの気持ちはなんだろう

七夕の願い事は、確かに嘘でも偽装でも無い。
本当に思ったことを演技とか無しに伝えたはずなのに、

いざ裏道お兄さん達に言われると、こんなに熱くなって、胸がドキドキする

今の姿だって、彼女には見せたくないのに

｢池照お兄さん。｣

彼女に呼ばれると、振り返ってしまう

池照)ｯ、Aさん。

一歩一歩近づいて来るリズムが、鼓動と重なる
なんでこんなにっ。多分、裏道お兄さんが冗談な言葉を口にしたから？

｢さっきは、ありがとう。代わりに、願い事を話してくれて。｣

池照)う、うん。いいんだよ！本当のことだったし。

｢っ…。私も、子ども達に素直にそう言えたら良かったのに。体操のお姉さんとして、まだまだだな。｣

苦笑いで話す彼女を見つめていた
Aもまた、裏道お兄さんのようにネガティブ思考だけど、優しい1面ばかりだ

池照)Aさんは、願い事とか無いの？

その時、聞いちゃいけなかったと後になり気づいた。
子ども達に聞かれて言えなかった事を、俺から聞くなんて…

顔を上げると、Aさんは構わず口にした

｢子どもの頃に願った夢は、大人になって期限が過ぎていたけど。大人になって今、池照さん達とこれからも一緒にいられるようにって、願ってるよ｣

｢お疲れ様！｣と最後に手を振りながら帰っていく彼女は、最後にこう言った

｢当たり前の人生が、当たり前のように続いたとしても、全員が幸せになれるとは限らないのにね｣

彼女もまた、何かに悶えている

こういう時、俺は言ってあげられる言葉が見つからない
もしかしたら、彼女を傷つけてしまうとか、悲しんでしまうとか。思ってしまうから

けど、

池照)Aさん！

裏道お兄さん達がいる当たり前な人生が、Aさんにとって幸せなら。

池照)俺はAさんから離れたり、1人にさせたりはしないよ。

まるで、プロポーズを口にしているみたい
それでも彼女は息を飲んで、さっきよりも満面な笑顔でこう言った

｢ありがとう、池照さん。｣

俺は、そんな彼女に。────────

iketeru side END