終着点は君の隣。1『蛇賀池照』

#9. 臆病 ページ10

もう一度足掻けば、何度だって立ち上がれば、元に戻れると思っていた

もう一度、リンクに戻って……




出木田)もう少しインパクトが欲しいのよねぇ。池照くんと詩乃ちゃんの歌で始まるのも悪くないけど、ここは裏道くんとAちゃんに…



熊谷)随分と入場に拘りますね…



詩乃)いつものパターンに見飽きたみたいよ




どうせ呆れられたら、捨てられるだけ
どんなに期待高くて、有望な選手だったとしても。

たった一瞬の出来事で、何もかも崩れてしまう




出木田)Aちゃん。ロンダートからのバク転いける？




幼い頃、将来はフィギュアスケート選手と決められてばかりに、バレエや体操、スケートを習わされてきた

沢山習った実績が、真逆ここで役立つとは思ってもいなかったけれど





｢分かりました。｣



池照)もしかして、Aさん…



兎原)あれ…裏道さん。Aちゃんって、体操やってましたっけ？



裏道)…さあ、



真ん中から離れた場所に着いて、一息吐いた

今になって、何を怯えているの、……
あの時、怪我した右脚が軋むように痛い

大丈夫。もう一度跳べる
ここはリンクじゃないんだから、大丈夫



ドンッと地面を蹴って飛び上がる
目の前が逆さになって、今自分は回転しているのだと直ぐに判断できる

跳べた。そう思った瞬間、あの日の出来事が蘇る
息が詰まって、痺れるように右脚が痛い



ドタンッ!!


｢ｯ！……｣




足を着地させようとしたが、そのまま尻を地面に叩きつけ転んだ

あぁ、やっぱり。出来ないんだ




池照)ｯ、Aさん!!



全員が近寄って、心配そうに見てくる

今の出来事が正解だと分かっていても、流石に受け入れられない、



池照)大丈夫！？怪我はっ、怪我とかない？？




焦るように心配してくる池照さんに吃驚した
そんなに酷い着地の仕方だったかな。それとも、




｢だ、大丈夫。すみません、もう一度やれば、｣




出木田)やっぱり、最初に戻しましょう。ごめんね、Aちゃん！怪我はない？



｢……はい。｣




出来ないと分かっていたけど、……悔しい

出来ないって見放されると孤独を感じて、いつか見捨てられる



池照)立てる？



｢っ、｣



それなのに、池照さんの差し出す手を握ることが出来なかった

それは私が、唯の臆病だから

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