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#23.逃げているんだろう ページ24

詩乃)っはぁ、飲んだ飲んだ!



熊谷)何か雨が降りそうな空ですね…もう遅いですし、タクシー呼びましょうか



「私ここからマンション近いので構いませんよ。」



詩乃)何言ってるのぉ。さっきの男にまた会ったりしたらどうするの!?



「それは……。」



池照)その、俺でよければ家まで送りますよ。



「っ、…」



また胸が鳴った

けど、池照さんにまた迷惑を掛けたくない
不安で怖いけど、池照さんにまで危険に脅したくない



「いえ。雨も降りそうだし、急いで帰れば何も問題ないよ。これでも付き纏われていたら犯罪レベルだよ」




あの男はもう現れない。早く帰れば何も問題ない

そんな安堵な気持ちで帰れるわけがないのに
強がって、見栄を張って。また、救いの手を振り払ってしまう




「えっと、それじゃあまた明日。お疲れ様でした」



詩乃)っちょ、Aちゃん!




サラリーマンが歩く居酒屋の前を通り抜け、急いで逃げるかのように走っていく

灯るオレンジ色の光と、賑わう声が通り過ぎていく


 居酒屋街から出ると、複数の街灯だけが残る


ポツポツと降り始める雨は、次第にザーッと音を立てて地面を湿らせていく




どうして逃げているんだろう



池照さんは、私のことを心配してくれていたのに
胸が鳴って、これ以上一緒に居るのが苦しくて


嫌、では無い筈なのに。迷惑とか負担を掛けたくないから、池照さんから差し伸べてくれる手を握れなくて




助けてくれたこと。本当は凄く嬉しかったのに





ブーッと鞄の中で揺れるスマホの画面から、蛇賀 池照 と表示されている

出ればいいのに、出るのが気まづい


池照さんが何かした訳じゃないのに、……
私の事で、池照さんに危害が及ぶのなら。
私の事を知らない方がいい




走り終えた呼吸と、服や髪から浸る雨の水が部屋に響く

明日も仕事で、池照さんと会うのが当たり前なのに



何逃げているんだろう




パパラッチとか、マスコミとか

同じ人間なのに、生きている世界は別々で。
情報を広げて、信憑性や信頼を得るためには、他人の人生を壊してもどうでもいいと思う人達ばかり



突然池照さんから離れようと思ってしまったのは、私がきっと。



──────

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作者名:ひな林 | 作成日時:2021年6月5日 8時

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