話を ページ8
朝の学校と言うものは、割と静かだ。睡魔を引き摺ったまま登校した生徒が、半分脳の動きを停止させながら他愛ない挨拶を交わす。覇気があるのは朝練のある運動部等だろう。
結局のところ、『私はどうすればいいのか』の結論は出なかった。行き当たりばったり上等、とにかく彼女と会話をする事だけを考えていた。「由良、おはよう」と掛けられた声にそれとなく返事をしながら。
敢えて早く来たのだが、教室の扉を開けた私の前には、廊下に並ぶロッカーから教材を取ろうとしたのであろう彼女がいた。彼女は学校を好んでいないのかあまり早く来なかったので、意表を突かれた。
「沙代子ちゃん、おはよ〜…」
じっ。彼女の瞳が覗いてくる。気まずい。
明るく言い接しやすくしようとしたのが裏目に出たかと心の中で舌打ちしていたが、意外な事に彼女は返事をしてくれた。
「おはよう、是枝さん」
早口に言うと直ぐロッカーの陰に隠れてしまったが、それでも胸の奥が熱くなるのを感じた。良かった、返事をくれた。それだけで嬉しかった。
しかし続く話題を頭をフル回転させて考えようとしたが、クラスメイトからの「おはよう」で残念ながら停止してしまった。
雑談しつつも廊下の方へ目を向ける。教材を取るだけというのに彼女はかなり戻るのが遅かったが、目が合った時に教材で口元を隠したのを見て何故だか微笑ましくなった。
思ったより嫌われてない、どころか悪く思われてるかすらも怪しい反応が純粋に嬉しかった。
「でも、まだ距離感じるなー」
「何が? もしかして永善さんのこと?」
声に出ていた。クラスメイトの一人は向けていた視線に気づいていたようでそう尋ねる。図星なだけ返答に困る。
「あの子話しかけにくい雰囲気だったけど、昨日ので更に〜って感じなんだよね」
「由良とは割と距離近い方だと思うけど」
「そう? 由良が近づいただけで距離は遠ざかってるんじゃない?」
わいわい、がやがや。
返答に困っていた分勝手に盛り上がってくれるというのは助かる反面、彼女の反応が怖い。
覗き見ると両耳にイヤホンをつけ読書していた。幸いにも聴こえていないらしい。
「あーもー! そういうのダメ!
私は沙代子ちゃんと仲良しになるんだから!」
謎の宣言に、パタンと本が閉じられたような音がした。
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しのみや(プロフ) - 話題が逸れた気がします『よるのこえ』。時間は空けどようやく更新できました。完全に今読んでる本の影響を受けています。 (2018年1月28日 2時) (レス) id: 7737f27251 (このIDを非表示/違反報告)
しのみや(プロフ) - 日向@引き籠りさん» コメントとお褒めの言葉ありがとうございます。拙い上にかなりゆっくりとした更新ですが、気長にお待ち下されば幸いです。 (2017年11月26日 23時) (レス) id: 71dd0065a1 (このIDを非表示/違反報告)
日向@引き籠り(プロフ) - ヤバいです(誉め言葉)更新頑張って下さい (2017年11月26日 22時) (レス) id: 1076c10db1 (このIDを非表示/違反報告)
しのみや(プロフ) - りゅうかさん» コメントありがとうございます。かなりゆっくりとした更新ですが、気長にお待ちくださればと思います…! (2017年8月27日 18時) (レス) id: a65fa47e99 (このIDを非表示/違反報告)
りゅうか - 続き楽しみにしてます (2017年8月24日 17時) (レス) id: 336901ff2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しのみや | 作成日時:2016年12月27日 1時