375話 ページ46
「坊っちゃま。その腕では…」
「気にするな」
あれから俺は練習に励み、完璧に仕上げていた。…だが、銃で撃たれてこのざまだ。ろくにできやしない。
「治療に専念された方が私もよろしいと思いますが…」
「つべこべ言わず黙って教えろ」
「…かしこまりました」
正直、腕は痛い。安静にしろとは言われているがそんな場合ではない。失敗してがっかりされるのは嫌だ。だから適当に済ますわけにもいかない。かと言って先延ばしにすればその間にどうなるか…
「いっ…」
「坊っちゃま!」
「下がってろ」
「…かしこまりました」
「後、痛み止めもってこい。いいな?」
「かしこまりました、坊っちゃま」
会いに行くのにもこんな情け無い自分を見せる訳にはいかないからな。
****
「…何?」
「ですから、お爺様が佐藤A様と早めにお会いしたいと…」
「何故だ」
「…『理由は分かるだろう』とおっしゃっておりました」
「ちっ…気付かれてたか」
俺が婚約を結ぼうとしていたのには気付かれていたか…それはまあいい。だが会わせろ?婚約する前に会わせて否定するつもりか?
「だが、遅かれ早かれそうなるか…」
だが何度も外出させてはあいつの体に負担がかかる。となると…プロポーズの前が最適になるか。面倒だな…バレたら最悪じゃねえか。
「分かった。そう伝えておけ」
「かしこまりました」
誰がどう来ようと関係ねえ。必ず成功させてやる。
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作者名:葉月 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/3f2cc79ad91/
作成日時:2019年3月10日 23時