好きと嫌いは紙一重なのか？8【跡部景吾】 (ページ5)

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334話ページ5

「…ない」

何もない。何も起こらない。私が来ているのもこの建物のスタッフさんは知っている(部屋に連絡来たし)。

「…にしても、遅くない？」

長時間経っているはずだ。体感にして1時間。時間的には記者会見の説明やらあってもおかしくないのだが…

「あの紙は……ここに来る時間は決まってるのに何時に始まるか書いてない…どうしようもない…」

流石に暇である。ちょっとお金持ちを満喫して色々してたけど、私にはどう扱ってよいか分からない感じの部屋なのである。壊した場合、高額の弁償をさせられそうなので大人しくしていた方が賢明だ。

と言っても、やっぱり何もしないのは暇なのでテレビを付ける。

『まもなく、記者会見が始まります。…………それでは、記者会見を始めさせていただきます』

画面の前には跡部君と跡部君のお祖父様。…え、会見始まってるんだけど…なんで私呼ばれたの？

「何であんたがここにいるのよ！」

反射的に持っていたテレビのリモコンを押してしまい、テレビの電源が切れる。振り返ると鬼の形相で女性が立っていて。

「何で…何であんたが元気に生きてんのよ！？」

そこにはもう、あの九条麗子の気品の面影すらなかった。

「記者会見に呼ばれて来てみれば隣の部屋があんただなんて…」

あー…そういえば部屋の前に名前が書かれた張り紙あったな…と思う。私が通ってきた部屋にはそんなものはなかったから私より奥の部屋なのだろう。

そういえば、呼ばれてたって言ってたよね…結局死亡フラグ的な何かでしたか。…だけど、絶対に死なないし、死ぬような思いもしなくて済むはずだ。外には皆がいるし。

「あの薬で死ぬはずなのに…死んだはずなのに…折角、景吾様と結婚が…」

…結婚は年齢が早すぎて無理、と言いたくなったが堪える。言ったら逆上しかねない。

「何であんたがここに呼ばれてるのよ！？金も地位も名誉もない、ただの庶民が！」

「そう言われましても…私も分からないので…庶民なのは否定しません」

「私は名実共に景吾様の婚約者なのよ！貴方なら分かるでしょ！？」

…あ、そういう噂あったんだ…とか思う。九条さんの妄想かもしれないが、あり得る話ではある。今度聞いてみようか。

「まだ気付かないなんて…」

そう言う九条さんの胸元は小さな物が輝いていて。まさか…