349話 ページ20
*九条side*
初めて景吾様にお会いしたのは4年前だった。跡部財閥の子息がイギリスから日本に来た、ということでパーティーが行われた。
見た目は悪くない。だが、正直言って嫌いだった。あの場でピアノを完璧に弾いてみせて、勉学は私の上。立ち居振る舞い、語学…景吾様は私の上位互換でしかなかった。だから嫌いだった。
「…また負けた」
完璧と言われた私は1度も彼に勝てることはできなかった。だから必死になって彼に勝つために努力した。…結局、勉学では勝つことはできなかった。
中2の頃になると気付けば彼のことを好きになっていた。多分、テニスに打ち込む姿や、同年代で自分より上を行く人を初めて知ったこと、その悔しさのせいだろう。
中3の時に告白した。結果はダメだった。あまりのショックでその時のことはあまり覚えていない。
様々な男子が告白してきては断ってきた。もう数え切れないくらいいる。どんな男も一目惚れさせていた。なのに、振られた。
手に入らない物なんてなかった。現実的に不可能なものは例外として、今まで欲しいと思った物は手に入った。そんな中、唯一手に入らなかったのが彼。そんな二重の悔しさがあった。
「…お父様」
「なんだ?」
「私…好きな人ができたんです」
「どこの誰だ?」
「跡部財閥のご子息…跡部景吾様です」
そんな私の言葉を聞いた父は喜んでいた。相手として相応しいからだろう。さらに言えば自分達の会社の経営にも有利になるからだ。
「告白したのですが…ダメでした」
「もっと相応しい女になれ。そうすれば認めてもらえる」
そう言われたからさらに努力した。さらに自分を磨いて、ピアノ、バイオリン、社交ダンス、勉学、語学、言葉遣い……何もかもを完璧に近づけた。世界中の人から認めてもらえた。
なのに彼は私に振り向いてくれることはなかった。
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作者名:葉月 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/3f2cc79ad91/
作成日時:2019年3月10日 23時