340話 ページ11
7階に辿り着くが、ここまで広い建物を今日ほど恨んだことはない。広すぎる。7階に辿りついたとは言え、場所が…
「そのネックレスは貴方が盗んだものです!」
遠くからだが確実にそう聞こえた。間違いない。Aの声だ。
「ちっ…遠すぎる…」
争いがヒートアップしているせいだろう。どちらの声も聞こえる。こういう時に誰もいねえのかよ…
「…いいわ。お詫びに楽に死なせてあげる」
まずい。このままじゃ間に合わねえ!
「A!」
扉を開けるとAがいた。だが、窓の方を向いていて恐らく聞こえていない。その理由も一瞬で察した。だから俺は咄嗟の判断で
「ちっ!」
Aを押し倒した。
「いやあああああああ!」
そんな叫び声がしてはっとした。床には血が。間に合わなかったのか…?
「おいっ、無事か!?」
うつ伏せのまま、返事がない。まさか…
「返事しろ!おい!」
「…あの…苦しいです…」
やっと返ってきた返事はいかにも苦しそうで。俺が間に合わなかったせいで…
「おいっ、誰か救急車…」
「そうじゃなくて…重いです…息がしにくいです…」
「あ、ああ…悪い」
Aには血は顔に付いているが、l傷がついているようには見えない。撃たれたわけではないのか…?じゃあ、この血は…
「…!跡部君、腕が…」
その言葉で撃たれたのがは自分だと気づく。だが、出血のわりには不思議なくらい全く痛くねえ。
「景吾様!ご無事ですか!?う、腕が…すぐに手当てを…ええと、この布を…」
…こんなやつに手当てされてたまるか。
「必要ねえ。…見てただろうな!」
言ったのは監視カメラの向こう側にいる記者達だ。どこにあるかは見えねえが、確実に聞こえているし、見えているだろう。
「行くぞ、A」
「景吾様!私もご一緒に…」
「お前はそこにいろ。俺に近づくな」
「景吾…様?だって、私達は…」
「知らねえ。何の話だ?…行くぞ」
俺はAの手を引いて部屋を出た。
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作者名:葉月 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/3f2cc79ad91/
作成日時:2019年3月10日 23時