317話 ページ38
空野の家に着くと、そこは目に見えて大騒ぎやった。
「お嬢様！お嬢様！」
一際大きな声。この家のお嬢様と言えば空野朱音しかおらへんわ。ちゅうことは…
「こ、こんな時にお客様…え、ええと…すみません、お引き取りを…」
「事態は分かっとりますわ」
止めるメイドを無視して声の方へ向かう。
「ど、どちら様で？ここから先は…」
「関係者や。ちょっと退いてください」
扉の前でも邪魔するメイドを退けて中に入る。
「お嬢様、お嬢様！…あ、貴方は何者！？」
思わず息を呑んだ。部屋の中心では空野が真っ赤に染まって倒れている。その周辺の床は血塗れだった。
「…友人ですわ。救急車は呼びましたか？」
「え、ええ…勿論。もうすぐ来るはずかと…」
近づいて出血の位置を見る。左脇腹ってところやな。しかも、腹部に近い方やからな…内臓傷つけられてたらちょっとヤバイわ。しかも、この出血の量…ショック死も考えられるわ…
『忍足、聞こえるか？』
付近に転がってあった空野のスマホから小さな声がする。
「宍戸か？」
『ああ。一応確認しておくが…あいつはいないよな？』
あいつというのは九条のことやろうな。
「ここにはおらへんで」
『ならいい。空野は…』
「傷口がはっきり見えんから何とも言えんけど、銃で撃たれたかナイフで刺されたかやな。状況的には撃たれたやろ」
『そうか…今そっち着いた。といっても、入り口だけどよ…そっち、救急隊員来てるか？」
「来てへんで」
『その家外の音ほとんど遮ってるからな…にしては、いい加減運ばれててもおかしくないはずだぞ？』
ここまでに何分経ったかは分からんけど、確かに結構経っとる。もうとっくに病院に行っていても不思議やないわ。
「お、お待たせしました！」
『九条か』
こいつやな、犯人は。発見までの時間を遅れさせて、さらには遠回りでもさせて救急隊員の到着を遅らせたわけやな…広いから遠回りさせられても簡単には気づけんやろ。
「私のせいで…申し訳無いです…」
嘘泣きが上手やな、こいつ。この場面でこいつが泣けるのが不思議やわ。
「そんな…九条様は何も悪くありませんよ」
悪いのはそいつなんやけど、と言いたいところをぐっとこらえた。
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葉月(プロフ) - みささん» このような作品ですが、読んでいただきありがとうございます！これからもよろしくお願いします！ (2019年1月19日 23時) (
レス) id: f4ed754532 (このIDを非表示/違反報告)
みさ - 初めまして。もう夢中になって読んでました。続きが楽しみです！ (2019年1月19日 21時) (レス) id: a32759bc4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葉月 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/3f2cc79ad91/
作成日時：2019年1月13日 23時
