294話 ページ15
「…A…どうしたの？」
面会謝絶を一時的に解いて朱音と会った。やっぱりおかしいのは私らしい。
「自覚してない？最近鏡見てる？」
『寝てばかりで見てないかな。今日お風呂の日だし、見ることにはなると思う』
「そっか。…鏡見たら分かると思うよ。今見てもいいけど」
そう言って手鏡を出してくるので、それを受け取る。自分の顔に驚いた。笑っていて目は死んでる。側から見れば絶対に避けたい人間だ。なるほど、こう言う訳か。
疑問に残るのは九条さんが今の私を見て何も言わなかったこと。…いや、医者が見たのはあくまで兆候。九条さんと話をしてより壊れたのかもしれない。そういえば、九条さんと会う前は看護師さんには何も言われなかったににその後に言われた看護師さんは若い人。経験の差かな。
「跡部もいつも通りでさ…何なのこれ…本当に九条さんのところ行ったわけ…？そうだったら…言うのやめとこ」
『九条さんからは婚約者として仲良くやってるみたいな話を聞いたけど』
「来てたんかい。うわー…信じたくないけどその説ありそうで嫌だな…」
そう言って朱音はため息をつき、頭を抱える。そして、意を決したように
「…よし。いいこと思いついた」
なんて言う。不敵な笑みで、自信があるようだけど…
「内容は秘密ね。Aにとっても跡部にとっても悪いことじゃないから！」
任せとけ！と自信有り気。今の感じなら頼り甲斐がとてもある。朱音がここまで自信を持つなら、良い話なのかもしれない。
「それじゃ、バイバイ。良いお年を！」
良いお年を、と紙に書いて朱音を見送る。年末には嬉しいことは何もなし…と思っていたけど、年越しそばは食べられました。
****
鏡の中の私がじっと見つめてくる。その目からは何も読めない。ただ冷たく見つめて、不気味に笑う鏡の私。
「彼は貴方のものではない。あの人のもの」…ああ、九条さんが似たようなこと言ったっけ。
「跡部景吾の相手に貴方は相応しくない」…これもそんな感じっけ。
誰の声かも分からない声が風呂場で反響して響く。そして気づく。
ーー嗚呼、これは自分の声だ。鏡の中にいる、本当の私。
崩れかけていた私の心は崩壊し、
「ふふ…ふふふふふふふ…」
そして狂ってしまった。
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葉月(プロフ) - みささん» このような作品ですが、読んでいただきありがとうございます！これからもよろしくお願いします！ (2019年1月19日 23時) (
レス) id: f4ed754532 (このIDを非表示/違反報告)
みさ - 初めまして。もう夢中になって読んでました。続きが楽しみです！ (2019年1月19日 21時) (レス) id: a32759bc4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葉月 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/3f2cc79ad91/
作成日時：2019年1月13日 23時
